ニース事件は過激派と無縁の大量殺人だった 現地ルポ、革命記念日に起きた惨事の真相

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ラフエジブフレル容疑者の自宅アパート。移民が多く暮らす地域にある©Kiyori Ueno

ラフエジブフレル容疑者が妻と別居後、約1年前から1人で暮らしていたアパートは、ニース市中心部から約4キロ北東の移民が多数を占める地域にある。実際にこの地域を歩くと、住民は移民が大多数で、女性の中には頭にヒジャブ(スカーフ)をかぶっている人も多く見かける。

地元の人々によると、この地域は移民の中でも特にチュニジア移民が多く暮らしているという。また、この地域の近くには、政府が低所得者のために建てたアパートがいくつも建っており、事件があった海岸沿いの高級リゾート地域とは雰囲気が全く異なる。

「この事件はムスリムとは全く関係がない」

ラフエジブフレル容疑者が住んでいたのは4階建てで、全16戸が入る簡素なアパートの2階だ。同容疑者が住んでいた部屋のすぐ下に住む女性は取材に対し「(ラフエジブフレル容疑者とは)毎日顔を会わせていたが、彼は挨拶をする人ではなく、変わっていた。彼はラマダン中でもアルコールの匂いをさせていた。私はムスリムだが、この事件はムスリムとは全く関係がない」と語った。

アパート付近を歩いていた60歳の男性は、20年前にチュニジアからパリに来て働き、2年前からニース中心部のホテルで働いているという。「この地域は世界中から来た人たちが住んでいる地域で、安全とは言えない」と話した。そして、同じチュニジア人による犯行に対して「恥ずかしい」と強い口調で語った。また、同アパート近くのカフェでコーヒーを飲んでいた、12年前にチュニジアから仕事を求めてニースに来たという男性は、「(事件は)本当に非道だ。あのような犯行は頭がおかしい人物のやることだ」と述べた。

ニースやマルセイユなどリゾート地として知られる仏南部には、距離が近いことなどから、旧フランス植民地・保護領である北西アフリカのマグレブ(チュニジア、アルジェリア、モロッコなどの国々)から地中海を越えてくる移民が多い。人口約34万人のニースには、チュニジア人だけで4万人が暮らしている。これはフランス国内でも最大規模のチュニジア人コミュニティーだ。

その移民の問題の1つがフランス社会への同化だ。伝統的なフランスとは宗教や文化が異なることから、フランス社会になかなか馴染むことができない移民が多くいる。移民はまた、フランス人から地位が低い外国人として扱われることも多い。

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