”まじめ力”だけでは、真の一流にはなれない 西武・秋山に見る、トップに登り詰める条件

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昨季終了後の秋季練習で、西武の渡辺監督に「凡才がトップに登り詰める方法」を聞くと、興味深い話をしてくれた。

「プロには当然、妥協しなければいけないところもある。妥協しないとケガをするからね。そこをわかっているかどうか。ケガをすると、元も子もない。プロとして、抜くところがあるのは当たり前。それをうまくできるかで違ってくる。つまり、練習のメリハリだよね。人に言われてやるのではなく、『今日は休む、明日はやる』と信念を持たないと、サボって見えることがある」

要は、気持ちのメリハリ

渡辺にこの話を聞いた数時間後、西武ドームで秋山と話をしていると、くしくも指揮官と同じようなことを語り出した。

「シーズンに入っても、生活にメリハリをつける必要がありますよね。きつくしすぎると、自分を苦しめちゃいますから。やるところと、やらないところを見極める。秋季練習でも、コーチには『様子を見ながらでいい』と言ってもらっています(12年シーズン終盤は、左足太ももに負傷を抱えながら出場していたため)。それを言われるのではなく、自分で覚えないと一流にはなれない。今は若いから、声をかけてもらっています。要は、気持ちのメリハリですね」

名選手は一概に、オンとオフの切り替えが上手い。オフでの休養を、良きオンにつなげているのだ。抜くところで抜かなければ、頭も体もオーバーワークで壊れてしまう。

プロ野球は「3年活躍して、初めてレギュラー」と言われる世界だ。一定以上の実力がある者なら2年くらいは勢いで活躍できるが、相手に研究され、肉体&精神に疲労が蓄積される3年目になると、プラスアルファの力をつけなければ結果を残せなくなる。慢心から自らを見失い、檜舞台に帰ってこられなくなる者もいる。

「プロ野球選手は、まじめすぎてはいけない」とよく言われるが、一生懸命に練習するのは言うまでもない話だ。そこに“非まじめ力”をいかにバランス良くミックスさせるかが、トップに登り詰める秘訣である。

中島 大輔 スポーツライター

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なかじま だいすけ / Daisuke Nakajima

1979年埼玉県生まれ。上智大学在学中からスポーツライター、編集者として活動。2005年夏、セルティックに移籍した中村俊輔を追い掛けてスコットランドに渡り、4年間密着取材。帰国後は主に野球を取材。新著に野球界の根深い構造問題を描いた「野球消滅」。「中南米野球はなぜ強いのか」(亜紀書房)で第28回ミズノスポーツライター賞の優秀賞。NewsPicksのスポーツ記事を担当。文春野球で西武の監督代行を務める。

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