「株価は景気に先行する」はあてにならない 儲けたいなら株価と企業業績の秘密を知れ

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売り上げが増えない、利益が伸びない、成長しない国で、しかもマイナス金利の市場で、成長株理論であるPER(株価収益率、株価と予想1株益の関係を倍率で表した指標)理論は有用でしょうか。

今後アナリストの業績見通しは下方修正が確実

証券会社・運用機関等は多くのアナリストを抱え、企業業績の変化を常にウォッチしています。代表的なのは大手証券会社が四半期決算の後に公表する3カ月ごとの業績見通しです。元アナリスト経験者からみれば、これらのアナリストの見通しは会社見通しに依存しますし、常に保守的で、利益の転換点ではその予測精度に限界があります。業績の変化についていけず、結果として実績を追認する形になってしまいます。

ここ1年、アナリストは業績集計のたびごとに下方修正を繰り返しています。利益予想は決して正確ではありません。今週から始まる(4~6)期決算発表の後の、アナリストによる業績見通しの改定でも下方修正は確実です。利益予想が頼りにならないとすれば、その予想利益をもとに算出するPERは投資指標としては使い物にならないということになります。 

具体的な例として、日経平均株価ベースの予想1株当たり利益のピークは昨年の11月30日でした。その翌日に日経平均は戻り高値の2万0012円を付けています。

前述しましたように実績ベースでは(10~12)月期決算から減益に転じていました。その時期に予想利益がピークで株価が戻り高値を記録していたという事実は、正しくない予想の下で投資採算をはじき出していたことになり、注意が必要です。

ファンダメンタルズ分析の精度は疑ってかかる必要がありそうです。それを補完する意味では、株式市場が我々に発してくれるメッセージが何を示唆しているのかを分析することで投資に活かすことが重要になってきます。

荒野 浩 マーケット・アナリスト

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あらの ひろし

あらの ひろし 1971年日本勧業角丸証券(現みずほ証券)入社後、調査部でアナリスト業務に従事。米国勤務を挟み一貫して、日本株の情報・市場分析を行う。1996年に朝日投信委託(現みずほ投信投資顧問)に転籍、調査部長・運用部長を経て、常務取締役投信運用本部長を歴任。 2012年に退職。その後はTV,ラジオ出演などで活動。日本株を中心とした市場分析の経験は約45年に及ぶ。投資Salon「荒野浩のテクニカル・ルームから」は、独立系アナリストのメルマガとして、国内最大規模を誇る。

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