チームラボ「超巨大アート」は何がスゴいのか 裸足でないと入れない「迷路」の中身は?

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入り口から中に入ると、まず靴を脱ぎ、ロッカーに荷物を預ける必要がある。そして、膝までズボンをたくしあげるように指示された。会場内の撮影は全てOKだが、作品が光によって描かれているため、フラッシュ撮影は厳禁だ。

通路を進むと「足湯」のような場所で足を洗う。その先には棚に積まれた無数のタオル。来場者の足を拭くために用意された数は、なんと10万枚以上にのぼるという。なぜこのような仕組みになっているかというと、床面が鏡であったり、水中に入らなければいけない作品があるため、裸足になって足を洗わないと観ることができないからだ。

そして、さらに小部屋のような作品を抜けていく必要があるのだが、そこは平面と垂直が存在しない「ブラックホール」。空間は真暗で、床と壁、天井の境目はなく、前に進もうとするほど足が沈み込み、人は無意識に身体を感じずにはいられない。その先は、道が分かれていて迷路になっている。彷徨うことで、だんだん自分がどこにいるか分からなくなるわけだが、これもコンセプトの一つ。「自分と世界の境界が曖昧になる状況を少しでも作りたい」(猪子氏)ためだという。

同じ作品は、二度と戻ってこない

「Wander through the Crystal Universe」は、光の点の集合によって作られた彫刻だ。

光の彫刻の集合体によって、宇宙空間を表現(写真提供:チームラボ)

中に入ると、宇宙飛行士・山崎直子さんが監修したという「宇宙の香り」が広がる。入口で配布されるQRコードをスマートフォンで読み取ると、宇宙を構成する星雲や彗星といった要素を、作品に投げ込むことができるようになっており、彫刻の形は鑑賞する人々によって創られていきながら、永遠に変わり続ける。床や壁は鏡になっているため、宇宙を構成する星々は無限に広がっていく。

「Floating in the Falling Universe of Flowers」では、巨大なドーム空間に、1年間の花々が変化しながら咲き渡る宇宙が広がっている。

スマートフォンで蝶を選択し投げ込むと、花の宇宙空間に舞いはじめる(写真提供:チームラボ)

数多くのクッションが転がっており、寝転んで観ている人も多い。ドーム全体を映像が回っているはずなのだが、いつの間にか自分が花の中を回転しているように錯覚を起こすから不思議だ。また、こちらも床が鏡になっており、立っていると自分が浮遊しているかのような感覚にとらわれる。

 「人と共に踊る鯉によって描かれる水面のドローイング - Infinity」は、鏡で囲まれた広大なスペースとなっていて、水面が無限に広がっている。

他者が存在するからこそ、作品が成立していく(写真提供:チームラボ)

中に入っていくと、水面に泳ぎまわる鯉が映し出されている。鯉は、水の中の人々の存在に他の鯉の影響を受けながら泳いでおり、単なるプロジェクションマッピングとは異なる。人々にぶつかると、花となって散っていく。時間が経つと、人々の存在に影響を受けて泳ぐ鯉の軌跡によって、カラフルなラインが重なり合い、一つの絵が作り出される。

どの作品も、コンピュータプログラムによってリアルタイムで描かれ続けており、あらかじめ記録された映像や、光の動きを再生しているわけではない。また、鑑賞する人の影響を受けながら変容し続けるため、現れた絵を観れるのはその瞬間だけで、二度と戻ってくることはない。

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