「LINEするより電話したい」  彼女がLINEをやめたワケ

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当時はスマートフォン黎明期。スマホメールの設定方法がわからなかったり、独特の文字入力法に慣れていないユーザーも多かったため、短文とスタンプでコミュニケーションでき、操作も簡単なLINEが歓迎された面もあっただろう。

だが、2012年半ばごろからLINEは機能を一気に拡充。企業や芸能人の公式アカウントの設置、占いやゲームといった周辺サービスの拡充、SNSのように近況を報告する「タイムライン」の追加など、機能が一気に増えていった。

機能は増えても画面デザインは工夫がこらされ、詰め込みを感じさせないシンプルさを保っていた……ように筆者には見えていたが、彼女のような初期からのユーザーの一部は、どんどん増える新機能に煩わしさを感じていたようだ。

「でも、マスに広まるってこういうことですよね……きっと。何でも屋さんにならないといけないのかなぁ」。悲しげに彼女は言う。

LINEを初期から使っている、別の20代の男性ユーザーはこう明かす。「僕のLINEはかなり前のバージョンなんです」。iTunes StoreやGoogle PlayのLINEのレビューに、「アップデートで使いづらくなった」「アップデートしたら動作が重くなった」とあるのを見て「面倒くさく感じるようになった」からだという。

ビジネスと引き換えに失われるシンプルさ

一般的に、企業が運営する無料のネットサービスがシンプルであり続けることは困難だ

当初はシンプルな機能でリリースされたサービスが、ユーザーを飽きさせないため、また、収益機会を拡大するために、新機能や広告などを加えてゴテゴテし、使いづらくなっていく例を、筆者もこれまでたくさん見てきた。

多機能化が間違いだというわけではない。それによってサービスをより便利に感じる人もいるだろうし、新機能を使いたくてそのサービスを始める人もいるだろう。ただ、シンプルなサービスを好んでいた人にとって新機能は邪魔に映り、ユーザー離れにつながることもある。

LINEから「みんな」がいなくなった

筆者が最近LINEを使わなくなったのは別の理由だ。“LINEの仲間”を失ったのだ。

筆者は2011年末、当時勤めていた会社の仲間が参加していたグループに誘われ、LINEを使い始めた。グループでくだらない話をしたり、スタンプのやりとりをしたり、写真を送り合ったりしていた。会社のスタッフ同士の個人連絡にもLINEを使っていて……楽しかったなぁ……。

2012年春にその会社を退職。そのころにはみんなLINEに飽きていたのか、グループへの投稿はほとんどなくなっていた。会社のスタッフに個別メッセージを送っても返事が来ないことが増えたし、筆者もLINEをあまり頻繁に見なくなった。

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