新幹線の海外展開が単なる輸出ではない理由 台湾高速鉄道に見る「現地化」の大切さ

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――高速輸送による時間短縮が社会変革をもたらすとのことですが、新幹線以外の高速鉄道システムでも同じ事は可能ではないでしょうか。

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ヨーロッパの高速鉄道は在来線への乗り入れを基本として発展してきた(写真:Leonid Andronov / PIXTA)

多くの人が利用できなければ、高速鉄道は社会変革をもたらしません。ですからキャパシティ(輸送力)と、それを実現するためのフリークエンシー(高頻度運行)や運行の正確性、そして当然ながら安全性が重要です。ヨーロッパ方式は在来線との共用を基本にしているため、残念ながらこれらに制約があるのが事実です。

中国もそうですが、ヨーロッパでもドイツやスペインの高速鉄道で大きな死亡事故がありましたし、フランスも何度か事故を起こしていて、昨年の暮れには試運転中に大事故が起きている。さらに、1時間当たり15本の運転に持っていける実績と能力は持ち得ていない。でも、コアシステムに日本の新幹線システムを採用している台湾高速鉄道はできるわけです。

日本のシステムだけが全ての国にふさわしいというつもりはありません。ただ、台北~高雄間など、300キロから800キロ程度までの距離で、かつ大都市が点在し、沿線の人口が一定規模あるなら、これはまさに新幹線システムに適した区間だと。その例として台湾は非常にいいと思います。台湾の方が、台湾高速鉄道は新幹線のショーケースだという言い方をしておられましたが、全くその通りなんですよ。

海外展開への活動は?

――マレーシア~シンガポール間の高速鉄道は、来年にも入札が行われると報じられています。IHRAとして、日本システムの採用に向けて活動を展開する予定はありますか。

特別に何かをすることはありません。もともと私たちの活動はプロジェクトの採択のためにやっているわけではないので、入札が近づいてきたから特に変わったことをやるということはありません。

ただ、マレーシアとシンガポールは、IHRAが発足して以来、向こうの人が来た機会も人数も、また当方の訪問機会も非常に多いんです。マレーシアのSPAD(陸上公共交通委員会)のトップも、シンガポール政府からも何人もの人が来て勉強していますが、引き続き機会を作り、情報提供など接触をいろいろしていきたいと思っています。

小佐野 景寿 東洋経済 記者

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おさの かげとし / Kagetoshi Osano

1978年生まれ。地方紙記者を経て2013年に独立。「小佐野カゲトシ」のペンネームで国内の鉄道計画や海外の鉄道事情をテーマに取材・執筆。2015年11月から東洋経済新報社記者。

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