相続税対策は大丈夫?アパート空室率が急増 神奈川県の賃貸アパートは3戸に1戸超が空室

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渡邊氏の元へは「30年一括借り上げ」などのうたい文句に引かれてアパート経営を始めた人からの相談が急増している。一括借り上げを行うサブリース会社から、契約賃料の引き下げを要求されて困っている、というのだ。

一括借り上げには注意

こうしたサブリース会社は30年にわたって借り上げることは約束するものの、その契約賃料は2年ごとに見直すケースが多い。空室が増えていれば、賃料引き下げを要求される。交渉がまとまらなければ、一括借り上げの契約を解除するしかない。そうなれば、自分で不動産仲介業者などを通じて、借り手を探してくる必要に迫られる。

相続税対策でアパート経営を始めようという人の多くは、「30年一括借り上げ」といった保証があることによって、賃貸経営のリスクを軽視しがちだ。だが「サブリース契約があっても、アパート経営が破綻することはよくある」(渡邊氏)。

新築時は相場よりも数%高い賃料で成約できることが多い。しかし、この“新築プレミアム”は、次回入居時には剥げ落ちる。以降は年1%程度の賃料下落を覚悟しておくべきだろう。アパート建築会社が提示する収支シミュレーションが、新築時賃料の維持を前提としているときは、甘言と考えたほうがいい。

30年間ずっと変わらない賃料保証をうたう業者もいるが、それはさらに心配だ。不動産投資コンサルタント、泉和コーポレーションの小林大貴氏は、「当初の賃料を30年間もの長期にわたって保証するのは、そもそも無理なビジネスモデル。むしろ警戒したほうがよい」と忠告する。

賃料が年々下がっても、借金の返済を含めた収益性を確保できそうか。また、周辺物件の空室率が上昇しても、自分の物件の空室率は低く抑えられそうか。そうした工夫を続ける覚悟と自信がなければ、相続税対策で始めたアパート経営で、逆に大事な財産を失うことになりかねない。

茨木 裕 東洋経済 記者

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いばらき ゆたか / Yutaka Ibaraki

1975年生まれ。「週刊東洋経済」編集部所属

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