手足を切るような”大リストラ”が始まる 城繁幸氏と考える「日本に依存しないキャリア」(上)

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ムーギー:これに対し悲惨なのが、ここ数年業界を経験しただけで特に業界内外に個人の名前でも相手にしてくれる人脈も、特定の業界での突き抜けた知見も持たない、賢いんだけど中途半端な名ばかりバイスプレジデント(VP)の皆さん。まだ自力で客を、つまり収益を金融機関にもたらすマーケティングができないため、マーケットが落ちれば最大のコストセンターに早変わりしてしまう。

外資金融業界はある程度出世して給料が高くなってしまうと、実力にかかわらず市況が悪化すればクビになる。昔は市場が回復するまでとか、比較的高い年齢まで会社が我慢してくれたんだけれども、今は20代、30代でもどんどん放り出されるんですよ。

だから、独立してもビジネスができるような準備を必死にやっておかないと、エリート企業に入れたとしても、そこでぬくぬく過ごしていたら、将来のリスクに対応できないな、と最近思いますね。こういう悲惨な目に遭っているエリートの先輩を見て、就職活動のリスク選好性が下がっている。最近は日系企業、ことのほか総合商社に人材が回帰しています。

ルネサス、エルピーダはパイオニア

――城さん、日本企業の場合はどうでしょうか? たとえば、シャープやルネサスエレクトロニクスを筆頭に、リストラが加速していますが、30代、40代で突然キャリアが断絶してしまうリスクは、日本でも高まっているのでしょうか。

:半導体、システムLSIの分野は、リストラの波がドカドカっと一気に来ている感じですね。20〜40代のときに、自分の属する市場や産業がなくなったとして、どうするのかという答えは、誰も持っていないのかもしれない。

ムーギー:そうですよね。

:海を渡って台湾などのメーカーに転職できればいいんだろうけど、全員が行けるわけじゃないですから。ルネサスやエルピーダメモリというのは、1つのパイオニアであって、たぶん同じような状況に陥る企業は、これから5〜10年でもっと広がると思いますよ。

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