分社化、新事業・・・エイチーム「次の一手」 東証1部へ最速上場を果たしたITベンチャーの課題

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拠点のある名古屋、大阪だけで採用をしているわけではない。東京からのUターン組の獲得にも取り組んでいる。2月7日には秋葉原UDXビルで会社説明会を開催する。「その場で私が説明するのは、エイチームの経営理念。名古屋に戻りたいという人、名古屋出身ではなくても土地にこだわりを持たない人に、説明会に来てほしい」。

分社化も「検討課題」

規模拡大にあわせる形で、組織改編も検討しているところだ。昨年はマザーズ上場、東証一部上場とビッグイベントが続き、組織改変に手を付けることが難しかったが、今年はそうした”障害”がないためだ。

はやし・たかお
●1971年12月岐阜県土岐市出身。87年3月多治見市立多治見中学校卒業。学習塾経営などを経て97年に個人事業としてエイチームを創業。2000年2月に有限会社、2004年11月に株式会社へと組織を変えた。エイチームは2012年4月に東証マザーズ上場。11月には最短記録で東証一部へ昇格した

具体的に検討しているのは、分社化。「まずは、土日勤務があるライフサポート事業の営業職について分社化を検討している。将来的には、多くのグループ会社を持つサイバーエージェントのような組織形態を目指していきたい」。分社化には、林社長に集中している日常の決裁を分散する目的もある。さらに、次世代リーダーを育成する狙いもあるという。「社長をやったこともないナンバーツーが後継社長をやるのは難しいと思う。たくさんあるグループ会社の社長のうち、もっとも成果を上げた優秀な人が後継社長になるようにしたい」。

事業の多角化プランも練っている。「ソニー、パナソニック、シャープと比べて日立が堅調なのはインフラビジネスをやっているから。エイチームも、インフラをやっていこうと考えている。そうした支えがないと経営理念の『今から100年続く会社』を実現するのは難しい」。さらには、「すぐ婚navi」が持つ窓口拠点や企業向けの営業部隊など、オフラインの事業基盤を生かすことで、他社には真似をできないようなサービスの創造を目指している。「数人のベンチャーでもできるようなことをやっていては、勝ち残れない。エイチームの規模だからこそできる事業を生みだしていかなければ」。

ともあれ、下期投入のゲームでヒットを生み出せるかどうかが目先の焦点だ。大手ゲームソフトメーカーもこの分野で本気を出しており競争環境は激化する一方。そんな中でヒットを量産できれば、優秀な人材も集まりやすくなり、正のスパイラルが回り始めることは間違いない。それだけに、”ダークサマナーの次”が重要である。

山田 俊浩 東洋経済 記者

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やまだ としひろ / Toshihiro Yamada

早稲田大学政治経済学部政治学科卒。東洋経済新報社に入り1995年から記者。竹中プログラムに揺れる金融業界を担当したこともあるが、ほとんどの期間を『週刊東洋経済』の編集者、IT・ネットまわりの現場記者として過ごしてきた。2013年10月からニュース編集長。2014年7月から2018年11月まで東洋経済オンライン編集長。2019年1月から2020年9月まで週刊東洋経済編集長。2020年10月から会社四季報センター長。2000年に唯一の著書『孫正義の将来』(東洋経済新報社)を書いたことがある。早く次の作品を書きたい、と構想を練るもののまだ書けないまま。趣味はオーボエ(都民交響楽団所属)。

 

 

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