化学メーカー「大再編時代」、日本は勝てるか 住友化学社長が語る「今後の生き残り戦略」

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ーー具体的には?

農薬では独自性の高い製品の研究開発を進めており、これらの上市が20年辺りから始まる。また、化学農薬とは違った切り口として、天然物由来の微生物農薬や植物生長調整剤などを用いて作物の収穫量を増やす「バイオラショナル」(住友化学による造語)分野の育成にも力を注ぐ。

薬品事業を担う大日本住友製薬は、統合失調症薬「ラツーダ」が業績を牽引している

大日本住友製薬を中核とする医薬では、大きな柱に育った統合失調症薬「ラツーダ」の販売をさらに伸ばす一方で、将来のための研究開発費は、がん幹細胞性阻害剤と目などの再生・細胞医薬に重点投下する。医薬なので先が読みづらい部分はあるが、いずれも大日本住友が先行している分野で、非常に期待している。

電子材料は有機ELの次世代フレキシブル材料、環境・エネルギーではCO2分離膜や、エコカー用のリチウム二次電池セパレータに注力する。CO2分離は主に天然ガスの精製や水素製造時に使用される技術で、当社が開発した膜分離法を用いれば、エネルギーコストを大幅に削減できる。ぜひとも事業化にチャレンジしたい。

有機EL部材を事業の大きな柱に育てる

ーー今年度から始まった3カ年新中計では、戦略的M&A枠として最大3000億円の予算を組んでいます。

スペシャリティの強化分野を対象として、競争力をより高めるためのM&Aは思い切ってやる。今はスピードの時代だし、戦略に合致した技術力のある企業を買収することで開発の効率も上げられる。

ーー住友化学は液晶偏光板、半導体薬品などの電子材料でも国内大手。特に韓国サムスン電子に深く食い込み、足元では同社向けの有機EL関連部材が伸びています。

サムスンは自社のスマホ用を中心に有機ELパネルの増産を進めており、(サムスン向けに)有機EL用タッチセンサーパネルの出荷が増えている。有機ELの部材・材料は当社が長年研究してきた分野。スマホで有機ELパネルの採用が広がり、ようやく本格的な普及の機運が高まってきた。

スマホに搭載される有機EL用のタッチセンサーパネル。韓国子会社で生産しサムスンに納入している

有機ELは発色が鮮やかで消費電力も低いが、一番すごいのは、素材の工夫次第で折り曲げたり、折り畳んだりできること。早晩、そうした画期的なフレキシブルタイプの製品も商品化されるだろう。

今は有機EL向けにタッチパネル、偏光板を単品で供給しているが、フレキシブル型用として、表面のウィンドウフィルムから偏光板、タッチパネルまで全部を一体化させた機能統合部材の開発を進めている。ディスプレイメーカーにとっても、部材を一体化した方がコスト、品質の両面でメリットがある。この機能統合部材を武器に有機EL部材を事業の大きな柱に育てたい。

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