トヨタがスポーツカーに注力する新たな事情 「86(ハチロク)」を改良、レースの経験を反映

拡大
縮小

2000年代、トヨタのグローバル生産・販売台数は急速に拡大した。業績も絶好調で、2001年度に1兆円を突破した営業利益は、それからわずか6年後には2兆円に届いた。

だが自動車好きからのトヨタの評判は決してかんばしくはなかった。「技術の日産、販売のトヨタ」と称されたように、トヨタの強さは車自体というよりも販売力にあると言われた。

売れる車を優先し、ワクワク感がなくなった

7月5日、あいにくの雨となったが、富士スピードウェイで新型86の試乗会が行われた

もちろん、壊れないという信頼性やコストパフォーマンスの評価は高い。だが、ワクワクドキドキするような車ではない。これは多くのトヨタ関係者も認めていることだ。

トヨタ車は、車に特別なこだわりを持たない多くのユーザーのニーズを十分に満たしていた。だからこそ世界最大の自動車メーカーにのしあがった。しかし、日本に限らず、先進国で進む若者の車離れに危機感を強めると同時に、自社の車づくりの姿勢がこの現象を助長していると反省するようになった。

「販売台数を維持するために、売れる車を優先してきた。そうすると、どうしてもスポーツカーが消えていく。その結果、若い人の車離れにつながったと反省している」と嵯峨宏英専務は率直に語る。

こうした反省から2007年、トヨタは再びスポーツカーの開発を決めた。だが、プロジェクトを任された多田CEは、当初どういうスタンスで臨むべきかわからなかったという。そこで、当時、マツダで「ロードスター」の開発責任者を務めていた貴島孝雄氏に教えを請うため広島を訪れた。

次ページスポーツカーで利益を出すには・・・
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
日本の「パワー半導体」に一石投じる新会社の誕生
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【浪人で人生変わった】30歳から東大受験・浪人で逆転合格!その壮絶半生から得た学び
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT