パート1「鑑賞する数学」(第1回)方程式・恒等式編

桜井進

 数学は言葉です。文字、単語、文により構成されるものを言葉というならば数学はれっきとした言葉です。いったい数学という言葉は何を表現して伝えようとしているのか、数学という言葉によって語られる世界とはいったいどんなところなのか、探検家としての数学者が目指す未知なる世界とはいかなるところなのか、探索の旅にでかけてみませんか。

 数学といえば数式、数式といえば等式 A=B を思い浮かべることでしょう。数学の世界は等式のあつまりといってもいいでしょう。AとBは違うものです。それが同じであるとはおかしいと思いませんか。そうなのです。A=B は特別なのです。AとBが同じであるとは異常事態です。なぜ数学者はそんな特別なことを考えるのでしょうか。A=B から見えてくる風景を描き出してみたいと思います。


これらはいわゆるxのn次方程式といわれるものです。高校までの数学に登場する典型的方程式といえます。これらの方程式とはいったい何だったのかを振り返るところから方程式を鑑賞してまいりたいとおもいます。「3x-6=0 を解きなさい。」という問題は、x=2が答え、すなわち解です。3x=6 と変形して、両辺を3で割ると x=6/3=2 となるのでした。では、2次方程式 x2-x-1=0 を解くには、


により、


と解くことができるのでした。この結果から次のことがわかります。方程式を解く、すなわち解を求めるとは、xの係数a,b,c,・・・が与えられたとして、それらを用いてxを表すことといえます。a,b,c・・・と足し算、引き算、かけ算、割り算、そして根号を使ってxを表すことができるとき、方程式が代数的に解けるというのです。3次方程式はカルダノの公式、4次方程式はフェラリの公式により解けることが16世紀にわかりました。例えば、x3-x2-x-1=0 をカルダノの公式により解くと、解は


のようになります。3次方程式は3乗根をつかって、4次方程式は4乗根を用いて解くことができるのです。このことを数学では「代数的に解ける」といいます。すると5次方程式に舞台はうつります。解の公式を求める計算の旅が続くことになりました。


ラグランジュ、オイラー、ガウスといった第一級の数学者たちをしても解の公式を見つけることができませんでした。ついに、天才ガロアにより1832年、5次以上の方程式には解の公式が存在しないことが証明されたのです。200年もの間、5次方程式との格闘があったことになります。世にも美しいガロア理論が誕生しました。方程式の次数、係数と方程式が解けるか解けないかの関係が明らかになったのです。

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