違法民泊をめぐる京都市とAirbnbの「攻防」 観光政策監「国の規制緩和方針も問題がある」

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――宿泊施設不足を解決する手段として「民泊」が出てくることが多い。

ありがたいことに、京都市はホテル建設のご希望を多数、いただいています。ビジネスホテル、シティホテル、ラグジュアリーホテルなど、しっかりしているホテルをきちんと誘致したい。民泊が広がることによって、こういった事業者の方々の投資意欲が削がれることは、大変大きな痛手。

また、京都における宿泊の魅力は、やはり旅館だと思っています。まだまだ、ホテルと比べても稼働率も低いし、旅館の魅力アップはこれからの課題。外国人観光客のさらなる取り込みを図るべく、トイレを洋式にするとか、ワイファイが入るようにするとか、設備投資を行い、業界とも一緒になって改革に取り組んでいます。民泊と競合してしまうことで、旅館が廃業に追い込まれるようなことにはしたくありません。

2020年の東京オリンピック・パラリンピック以降、大交流時代が来て、これからたくさんのお客様が来られる。今の時期は、観光業界をきちんと育てていきたい。

――京都は観光資源に恵まれているが、他の地方では事情が異なるかもしれない。

ホテルの進出計画もなく、部屋が余っているマンション、アパートがあって、それをなんとか活用したいということであれば、それぞれの地域の実情にあった形で、民泊を導入されたらいいと思います。一番に思うのは、民泊に対する考え方は、各地方それぞれの事情によって、バラバラということです。

国が地方の実情を理解しているか疑問

――国が新たに民泊新法を作ろうとしている。閣議決定についてどのような印象を抱いたか。

国としては、ホームステイ型、家主不在型、両方を進めようとしていますが、家主不在型は課題をきちんとクリアしないと難しいのではないでしょうか。

国の新たな「民泊新法」の案については、「住居専用地域」に限って、地域の実状に応じて、条例等により実施できないようにすることが可能とされています。しかし、京都市では、「住居専用地域」における民泊の開設に限らず、広く民泊にかかわる制度全体にわたって、地域の実状を踏まえた運用を認める内容にしていただきたいと考えています。国が本当に全国の状況を把握して制度設計されているのか、やや疑問な点もある。

――国が、地方自治体にヒアリングなどを行うことはないのか。

そういうことは今のところありません。一方通行でも、こちらから要望を積極的に出していくしかない。家主不在型の「民泊」を進めるなら、細かい運用についても、自治体にフリーハンドを与えてもらいたい。地域の実情に配慮せず、ルールを定められてしまうと、様々な形でトラブルを生むことになると懸念しています。

関田 真也 東洋経済オンライン編集部

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せきた しんや / Shinya Sekita

慶應義塾大学法学部法律学科卒、一橋大学法科大学院修了。2015年より東洋経済オンライン編集部。2018年弁護士登録(東京弁護士会)

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