違法民泊をめぐる京都市とAirbnbの「攻防」 観光政策監「国の規制緩和方針も問題がある」

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――違法状態でサービスをしているという指摘に対して、Airbnb社はどのような主張をするのか?

民泊をされている方が違法なのであって、プラットフォーム事業として単にサイトに載せているだけなのだと主張されている。つまりホストとゲストの自己責任ということですが、民泊の当事者には周辺住民も含まれている。日本における民泊事業のリーディングカンパニーとして、社会的責任はあるはずです。

京都市観光政策監の糟谷範子氏

最大手で、新しい形のシェアリングエコノミーを推進していくのなら、世論を味方につける形の方がよいのではないかと思いますが……。世界中で問題になっているところを見ると、「平穏な生活を守りたい」と考えることは、全世界共通なのでしょう。

ただ、民泊を全て否定するつもりはありません。京都市としては、「暮らすように旅する」ということをずっと謳い文句にしてきましたし、宿泊者が地域と触れ合えるような形のものは増やしていきたい。しかし、違法で問題があるものについては、当然やめてもらいたいということです。

「ホームステイ型」民泊は長期留学につながる

――京都市も、いわゆる家主が在住している家に宿泊する「ホームステイ型」は、ポジティブに考えている印象がある。

こうした民泊は、国際交流にもつながります。京都市は人口の10%が大学生。少子化が進む中、各大学は留学生の誘致に力を入れている。短期留学生は、ホームステイをきっかけに、長期の留学にもつながってくるというケースも多いです。一ヶ月未満の短期の留学生を受け入れることは、京都の民泊としてあるべき姿だと考えています。

――逆に、「家主不在型」については、旅館業法に基づく許可を取らなければ、全面的にNOという立場?

そうです。この場合は、きちんと簡易宿所という形でやってほしい。「副業として収益をあげられる」と考えて、安易に参入される人が多いのですが、人を泊めるということは、衛生の問題もあるし、火事や耐震など人命に関わるリスクもある。旅館業法を遵守することで、防災面、衛生面がクリアされることになるわけです。旅館業の組合に入れば、おのずとコミュニティの中で勉強をすることになりますが、民泊をされている方はそういった危機意識が欠けている人が多い。

パスポートの写しもきちんととっていないわけですから、宿泊者もどういう国に渡航してから日本に来てるか分からない。もしその方が、心臓発作などで急死されたら、どこの誰か分からないということになりますよね。パスポートの情報があるのなら、大使館に電話すれば責任を持ってくれると思いますが。

これまでは、特に大きな事故は発生していませんが、もし一件でも発生したら大変なことです。これまで繊細に積み上げてきた、京都の観光都市としてのブランドも毀損されてしまう。代行業舎・管理業者が、安心安全を確保してやることがきちんと育成されれば、いい形の民泊が広がるとは思うが、現実は安易な形でされているのが現実でしょう。

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