ダウ最高値更新、一段高のカギは企業利益 今回の強気相場は過去2番目の長さ

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 7月11日、NY株式市場のSP総合500種株価指数は、1年余りで最高値を更新しており、アナリストは今年下半期に企業業績が持ち直せば、さらなる上昇もあり得るとみている。NY証券取引所で6日撮影(2016年 ロイター/Lucas Jackson)

[ニューヨーク 11日 ロイター] - ニューヨーク株式市場のSP総合500種株価指数<.SPX>は11日、取引時間中に史上最高値となる2143.16をつけ、終値も2137.16で最高値を更新した。年初は落ち込んだが、2009年3月10日から続く強気相場を確認した。

今回の強気相場は過去2番目の長さ。1年余りで最高値を更新しており、アナリストは今年下半期に企業業績が持ち直せば、さらなる上昇もあり得るとみている。

今年は、まず中国経済の先行き懸念が投資家心理に影を落とし、原油安の長期化や一部の国々がマイナス金利を導入したこと、米国での追加利上げ観測も追い打ちを掛けた。

S&P500は2月までに高値から15%下落。20%の落ち込みなら弱気相場に定義されるところだった。

いったん上り調子をつかみかけたものの、欧州連合(EU)離脱派が多数を占めた英国民投票を受け、経済の先行き不透明感から6月27日には3か月半ぶりの安値をつけた。

一段高か

今後の焦点は、さらに上り調子が続くかどうかだ。昨年5月21日の終値2130.82を上回ったことが、一段高の契機になるとみる専門家もいる。

ファンドストラット・グローバル・アドバイザーズ(ニューヨーク)のマネジング・パートナー、トーマス・リー氏は、「一般的に、最高値を更新し、利益が好転し始めるという組み合わせは、投資家に株式を買い増す自信を与える」と述べ「まだ上がる余地は十分にある」として年末には2325を目指すと予想した。

米バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチのアナリスト、スティーブン・サットマイヤー氏は最近のリポートで、株価指数が最高値をつけてから300日超で52週高値をつけると、翌年にかけて91%の確率で指数が上昇し、平均リターンは15.6%という。

さらに、上昇の裾野の広さも朗報だ。昨年のS&P500上昇に寄与した企業は少数だったが、今年は300を超える企業が上昇圏に入っている。

S&P500のセクター別でみると、一般消費財<.SPLRCS>と工業<.SPLRCI>の指数はともに取引時間中の最高値を更新。景気に左右されにくい公益事業<.SPLRCU>指数は11日こそ下げたものの最も好調な指数の一つで、6日に最高値をつけている。

2月以降の上昇をけん引しているのは17%超の上昇率となった金融<.SPSY>と20%超上昇のエネルギー<.SPNY>、素材<.SPLRCM>の指数だ。これらの業種の堅調ぶりは、4四半期連続の減少が予想される企業利益が、今後増加に転じる兆しだとの指摘もある。

トムソン・ロイターの調べでは、今年1─3月期、4─6月期はともに5%の減益が見込まれるものの、下半期は増加に転じる見通しで、企業業績は転機を迎えているといえる。

S&P500を構成する企業の株価収益率(PER)を正常な水準に戻すためには、増益が必要になってくる。向こう12カ月の利益見通しに基づくPERは平均16.8倍で、投資家が慎重になる15倍を上回っている。

上昇を息切れさせかねない要因は他にもある。米国の成長は緩やかなままで、経済指標はすぐに悪化しかねない。米大統領選の行方や英国のEU離脱をめぐる動きが経済の先行き不透明感を増す可能性もある。

フェデレーティッド・インベスターズの首席株式市場ストラテジスト、フィル・オーランド氏は「行く手には悪い材料が目白押しだが、誰もが見て見ぬふりをしているような感じだ」と述べた。

(Chuck Mikolajczak記者)

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