安倍政権参院選圧勝で日本株が低迷する理由 「改憲勢力3分の2」は大きな副作用をもたらす

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だが、今はただでさえ、成長戦略に対する懐疑的な見方や、「黒田日銀」による金融緩和に対するひずみなどが嫌気されて、日本株は外国人投資家にそっぽを向かれている。筆者は、これまでも「外国人投資家が日本株に関心を向けるようにするには、痛みを伴う構造改革を実施するのが最短距離」と主張してきたが、今回の勝利で、こうした政策をとる可能性はかなり低くなったと言えよう。

もっとも、一部メディアが実施した出口調査によれば、憲法改正の是非について尋ねたところ、「賛成」が29.6%だったのに対し、「反対」は36.0%と約6ポイント上回ったほか、「分からない」が34.4%に達したという。国民は憲法改正に必ずしも積極的ではない。

円高基調変わらず、日本株の上値は重いまま

また、憲法改正に関しては、衆参の両院で3分の2以上をとったからといって、国会で全て片付くわけではなく、その後の国民投票で過半数を獲得しなくてはならない。今後、安倍政権が、憲法改正に向けてギアを一気に上げるかどうか。これが大きなポイントとなりそうだ。

外国人投資家を振り向かせるのはそう簡単ではない。市場で期待されている規制緩和策などに対して、一向にトーンが上がらない、もしくはトーンダウンという展開となれば、日本株の上値はますます重くなろう。

折しも、英EU離脱で米国の金利引き上げ観測が大きく後退していることから、為替市場では円高ドル安に向かいやすい。8日の米雇用統計の結果は、市場予想を大きく上回ったが、ドル円の方向性はまったく変わっていない。外部環境がどうにもならないなか、期待されていた政策も頓挫してしまうと、今後の日本株はかなり厳しいと言わざるを得ない。
 

田代 昌之 マーケットアナリスト

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たしろ まさゆき / Masayuki Tashiro

北海道出身。中央大学文学部史学科日本史学科卒業。新光証券(現みずほ証券)、シティバンクなどを経てフィスコに入社。先物・オプション、現物株、全体相場や指数の動向を分析し、クイック、ブルームバーグなど各ベンダーへの情報提供のほか、YAHOOファイナンスなどへのコメント提供を経験。経済誌への寄稿も多数。好きな言葉は「政策と需給」。ボラティリティに関する論文でIFTA国際検定テクニカルアナリスト3次資格(MFTA)を取得。2018年にコンプライアンス部長に就任。フィスコグループで仮想通貨事業を手掛ける株式会社フィスコデジタルアセットグループの取締役も務める。

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