企業がNPOと協働すべき3つの理由 ビジネスと社会貢献の新たな関係

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理由(2): 社員の“情熱”に火をつけることができるから

企業がNPOと協働すべき2つ目の理由は、社員のモチベーション向上にあると僕は考える。

20代や30代のビジネスパーソンを中心に、彼らが働くモチベーションを感じる源泉は「目に見えるもの」から「目に見えないもの」へとシフトしていると感じる。とにかくおカネを稼いで利益のみを追求するという仕事ではなく、社会を変えている実感を持てる仕事に対して、感度の高いビジネスパーソンほど魅力を感じるようになっているのだ。

こうした社員のモチベーションの源泉の変化に目をつけた企業が、社内でNPOとの協働に戦略的に取り組み始めている。

たとえばNECやマイクロソフト、ゴールドマン・サックスといった企業は、NPO法人サービスグラントという団体と組んで「プロボノ」と呼ばれる活動を企業内で実施している。

NPO職員との議論を重ねるゴールドマン・サックスの社員たち

「プロボノ」とは、ビジネスパーソンたちが本業のスキルや経験を活かしてNPOの活動をサポートする活動だ。たとえばNECでは、社員の持つITスキルを活用してNPOのWebシステムやデータベースなどの構築に取り組んだ。またゴールドマン・サックスでは、社員が半年間にわたってNPOの事業展開に向けた戦略構築を行うとともに、戦略実現に向けた研修の提供や広報ツールの制作を支援した。

企業がこうした活動に社員を参加させているのは、社員のモチベーション向上や、会社への帰属意識の強化を狙っているからにほかならない。先述したパナソニックの社員さんも、ベトナムでの「留職」から帰国した際「パナソニックが創業したときの景色というのは、“ものづくり”を通して目の前の人や社会を豊かにできるという、大きなビジョンだったのだろう」と、目を輝かせて自社について語っていた。

多くのNPOは、企業よりも圧倒的に社会の現場に近い場所で課題解決に向き合っている。企業の社員が本業で培った力でNPOの活動に貢献することは、普段の仕事と社会との接点を見つめ直す機会になり、彼らが「会社で働くこと」の意義を取り戻すことにつながっていくのだ。

日々の業務を淡々とこなす社員しかいない企業と、目の前の仕事にも「想い・情熱」を持って真剣に取り組む社員に溢れた企業とでは、組織が生み出す成果に間違いなく大きな差が出てくるだろう。

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