パナソニック、「脱家電メーカー」への決意 津賀社長が語る、目指すべき姿

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<Column>
猛追する日本勢「有機EL」の勝算
「われわれが先行していたはずなのに。やはり、日本メーカーの技術力は侮れない」。CES会場のソニーブース。世界最大となる56インチの「4K有機ELテレビ」を前に、韓国メーカーの幹部は驚きを隠さなかった。
CESでは毎年、家電業界の方向性が示される。昨年はLG電子、サムスン電子の韓国2社が大型の有機ELテレビを大々的に展示、2012年中の市場投入を表明し注目を集めた。が、両社とも量産に難航し、発売に至っていない。
「脱・自前」で挑む日本勢
後れを取った日本勢が、今年は存在感を示した。ソニーが展示用の映像として使用したのは、ブラジル・リオのカーニバル。ダンサーが身に着けた豪奢な装飾品のきらめきが色鮮やかに再現され、来場者は息をのんで見入った。
発色のよさや薄型軽量化、低消費電力が特長で、次世代ディスプレーの本命とされる有機EL。ソニーは07年に11インチの有機ELテレビを商品化するなど、技術の蓄積がある。今回は、ハイビジョンの約4倍の解像度を持つ「4K」と組み合わせることで高い技術力を証明した。今後は、提携する台湾AUOと量産プロセスの確立を急ぐ。
パナソニックも56インチの4K有機ELテレビを展示した。従来、パナソニックは材料ロスが少ない生産方式の研究に集中。技術をブラックボックス化するために、製造設備も自前で開発してきた。が、昨年、有機ELでソニーとの共同開発に踏み切った。展示した試作機の基板はAUO製で、ソニーを通じて購入した。
韓国2社は今年、有機ELテレビを発売するが、量産技術は確立していない。「13年中に量産技術に関してメドをつける」(ソニーの平井一夫社長)と日本勢2社は追い上げを図る。
液晶テレビの価格下落は止まらない。有機ELテレビ市場が立ち上がったとして、投資に見合う収益が確保できるのかは不透明だ。華やかなCES会場から、テレビ事業立て直しの答えは見いだせなかった。

(本誌:前野裕香 =週刊東洋経済2013年1月26日号)

前野 裕香 ライター

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まえの ゆか / Yuka Maeno

1984年生まれ。2008年に東洋経済新報社に入社し記者・編集者として活動した。2017年にスタートアップ企業に移り、広報やコンテンツ制作に従事。現在はフリーランスライターとしても活動中。

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