三菱自「軽生産再開」に地元企業が冷たい理由 サプライヤーが学んだ"過去の教訓"とは

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従業員への対応では、別工場への出向や他部署への配置転換で雇用の維持を図ったが、一部の企業では解雇や雇い止めといった厳しい対応を迫られた。

7月4日、生産再開について報道陣の取材を受ける須江隆行・水島製作所所長(筆者撮影)

ただ、倉敷市に隣接し、三菱自動車向けのサプライヤーを数多く抱える総社市(そうじゃし)の石原和則・商工会議所事務局長は「雇用面で心配はしたものの、思ったほどの影響は出なかった」と話す。

雇用への影響が想定していたより小さく済んだ理由は2つある。1つは生産が止まったのは水島製作所のうちの軽4車種だけだった点だ。水島製作所で生産される30万台超のうち、不正の該当車は20万台ほど。水島では電気自動車「i-MiEV」(アイ・ミーブ)や輸出向けの「ギャラン フォルティス」といった車種の生産は続いていた。

岡山県中小企業団体中央会が実施したアンケートでは、三菱自動車と取引がある企業30社の中で、軽4車種に対する売上高比率が7割を超えたのは1社のみ。軽4車種だけに依存している企業は少なく、工場の全面停止に追い込まれた企業は数社だった。

地元で進む、"脱"三菱自動車依存

2つ目の理由は“過去の教訓”からサプライヤー側のリスク分散が進んでいることだ。

三菱自動車の販売台数は、2000年前半に発覚したリコール隠しや2008年のリーマンショックなど、大きく変動してきた。

水島製作所の生産台数は、直近ピーク時である2002年度の101万台から、2015年度には40万台にまで縮小している。

こうした経験から、地元のサプライヤーは三菱自動車に依存した経営を改め、「他メーカーとの取引を増やすことでリスク分散を図ってきた」(岡山県経営支援課)。総社市商工会議所の石原和則事務局長も「この10年間で三菱自動車への売上高比率を2~3%にまで下げた企業もある」と話す。

実際に水島工業地帯の自動車関連産業の出荷金額を見てみると、水島製作所の生産台数ほどは落ちていない。

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