日本で児童ポルノ犯罪者の更生が難しい理由 刑務所の更生プログラムも効果薄…

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公判で女性検察官から、なぜ児童ポルノ画像のアップが悪いのかと問われ、男性は「永遠にネットの中に(画像が)残る。永遠に苦しみを与え続けることになる」とうなだれて答えた。収集した画像データは、警察がパソコンのOSごと消去したといい、男性は「感謝しています」と話した。

男性は昔から女児の裸に興味があったといい、10歳の少女らに対する2つの強姦事件(被害者が13歳未満の場合は暴行・脅迫がなくても成立する)を起こすなど、性犯罪の前科がある。

再犯防止に向けて、男性は「精神科医のカウンセリングを受けます。ほかにも、麻薬(依存症患者を支援する)の『ダルク(DARC)』のようなものが性犯罪者向けにもあると聞いたので、探してみようと思います」と答えた。

再犯防止支援が乏しい日本

しかし、本人に強い意思があっても、性犯罪者が効果的な更生プログラムを受けるのは難しい。精神科医で日本で唯一の性犯罪者の治療専門機関「性障害専門医療センター(SOMEC)」の福井裕輝代表理事は、弁護士ドットコムニュースの取材に対し、「病院の精神科に行っても門前払いされると思います」と語る。

「性犯罪に関するカウンセリングは治療の対象として認められていないので、保険も使えません。薬物依存の場合は精神科に診てもらえるし、ダルクのような専門施設もありますが、性犯罪にはないのが現状です」

加えて、刑務所の更生プログラムも効果が薄いという。「刑務所の中には欲求が高まる要因がありません。治療は社会生活の中でするしかない。厳罰化の流れを悪いとは言いませんが、いずれ出所するのですから治療の問題は別に考えなくてはいけません」。SOMECでは、3~5年の通所治療やホルモン剤の投与などで再犯防止を支援している。

くしくも、今回の判決で裁判官は「罪を償った後は、カウンセリングを受けるなどして、再犯をしないようにしてほしい」と述べた。しかし、日本では、被告人のような性犯罪者への再犯防止支援が乏しいのが現状だ。

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