ヤフー小澤氏「楽天、アマゾンはまだ遠い」 ショッピング事業を率いるキーマンを直撃

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――アマゾンは男性の利用比率が高く、楽天は女性に強いと言われる。Yahoo!ショッピングの場合はどうか。

ポータルサイト「Yahoo!JAPAN」の利用動向と同じような構成比で、男性が6割で30~50代が中心だ。

あらゆる年代の利用者を増やしたいと思うが、若い世代になるにつれてヤフーのポータルサービスの存在感は低下している。テレビCMも展開しているが、若い世代がテレビを見るかというとそうでもないので、利用拡大に向けてさまざまな手段を試す必要がある。

――決算会見で大矢俊樹CFOは、ショッピング事業について「遅くとも2017年度には黒字化できる」と述べている。手数料が無料のビジネスモデルのままで実現できるのか。それとも、出店する事業者と利用者の双方が十分に増えた段階で手数料を導入することもありうるのか。

手数料の導入は、いっさい考えていない。現在の広告モデルを続けていく。中でも期待が大きいのが、後払い型の広告商品「PRオプション」だ。出店者は商品代金の1~15%の間で広告料率を設定できて、料率に応じて検索結果の上位に出やすくなり、広告料は商品が売れてから支払う。

月額の出店料など、手数料を無料にしているので、出店者からすると、ほかのECモールに払っている手数料程度は「PRオプション」にも予算をかけようとする意欲が生まれやすい。

2013年に手数料を無料化する「eコマース革命」をスタートしたが、手数料なしでどうやって事業を成り立たせようかと頭をひねった。「PRオプション」は広告だが、手数料と同じように、流通総額が伸びるのに連動してヤフーの収益が増えていくのも特徴だ。検索事業で培った技術をフル投入して作り上げたので、他のEC事業者にはまねできないはずだ。

利便性をどう向上させるのか?

小澤隆生(おざわ たかお)/早稲田大学卒業後、1999年にEC関連会社を創業。楽天による子会社化・合併で同社に入社。プロ野球楽天イーグルスの立ち上げを担当し、2006年に退社。2012年ヤフー入社、2013年から現職

――連結子会社のアスクルは大規模な物流設備を持っている。モール型ECは配送が各出店者に任されるのが基本だが、利便性を高めるために、物流面でYahoo!ショッピングとの連携を進める可能性は?

いったん倉庫に商品を集めておいて、そこから配送する方法など物流に関してはつねに研究している。だが、結局はコストと得られるメリットをどう考えるか。日本の宅配業者は非常に質が高く、配送も速い。(自社で物流網を整えるかどうかで)当日配送ができるか、翌日になるかといった違いが出るにしても、それほど大きな差だとは考えていない。

むしろ、自社倉庫のないモール型ECの大きな課題は、統合的な在庫管理ができないことだ。利用者が「在庫あり」と表示されているので注文したが、実は売り切れていたという状況は避けたい。これは、倉庫を持たなくてもシステム面で対応を進められる部分が大きいので、今後、改善を進めていく。

山田 泰弘 東洋経済 記者

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やまだ やすひろ / Yasuhiro Yamada

新聞社の支局と経済、文化、社会部勤務を経て、2014年に東洋経済新報社入社。IT・Web関連業界を担当後、2016年10月に東洋経済オンライン編集部、2017年10月から会社四季報オンライン編集部。デジタル時代におけるメディアの変容と今後のあり方に関心がある。アメリカ文学、ブラジル音楽などを愛好

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