アシックス、ナイキに挑む?チヨダの胸算用 靴小売りがPBでランニングシューズに参戦

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というのもランニングシューズは、ノウハウのない企業が一朝一夕に踏み込める分野ではない。デザインや素材の良しあしで勝負できるウエアと違い、ランニングシューズに求められる機能は、極めて複雑だからだ。これがプレーヤーが事実上、一部の大手に限られてきた理由でもある。

着地時に体重の2~3倍ともいわれる衝撃を受け止めつつ、推進力に変える。足の複雑な動きに柔軟に対応する形状や素材を使いながらも、通気性や軽量性、安定性を損なわず、耐久性も確保する。これらはえてして相反する要素であり、すべてを満たすのは難しい。製品開発には多大な蓄積を必要とする。

ターゲットをビギナーに絞り込み

一方、チヨダには勝算がある。世界の一流ブランドと真っ向から勝負して、ではない。おそらく熱心に走り込んだり、タイムにこだわったりするようなランニング愛好家は、チヨダの靴には見向きもしない。チヨダも「速く走ることやタイムの更新を目指すランナーはターゲットにしていない」(白土孝取締役マーケティング本部長)。ターゲットを割り切って絞り込むことで、需要を刈り取ろうとしているのだ。狙うはビギナーである。

今回、チヨダが開発したランニングシューズは、「初心者が足を痛めずに安全に走るための機能」に特化している。インソール内にパッドを挿入することで土踏まずの落ち込みを防ぐなど、ケガを事前に予防する機能を盛り込んでいる。

ランニングブームといっても、真剣にタイムの向上を目指すランナーばかりではない。健康増進やダイエットなどを目的に走るランナーも少なくない。チヨダはここに着目。こうした層に手頃な価格の商品を取り揃えることで、需要を取り込めると踏んでいる。

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