事後レポ

金融産業革命の本質と未来考察

FinTechの波がもたらす創造的破壊の全貌

金融(Finance)とITの技術(Technology)の組み合わせで、金融にイノベーションを引き起こしている「FinTech」について考える「FinTech Day」が5月、東京・港区で開かれた。FinTechのスタートアップ、ICT、金融、メーカー等の企業、国や日本銀行、法律事務所、大学から関係者が一堂に会し、FinTechをめぐる最新動向や、新たな可能性について論じた。
主催 東洋経済新報社
Platinumsponsor
 日本アイ・ビー・エム
 ビザ・ワールドワイド・ジャパン
 日本マイクロソフト
Gold sponsor
 キリバ・ジャパン
 長島・大野・常松法律事務所
 PwC Japan

FinTechの動きを踏まえた金融庁の対応

金融庁 総務企画局 参事官
(総合政策等担当)
油布 志行

金融庁の油布志行氏は、FinTechに対する金融行政の取り組みを説明した。平成27年度金融行政方針は、FinTechが金融業・市場を大きく変える可能性を指摘。金融関連IT企業等への出資の容易化を含めた銀行法の一部改正案につながった。昨年末には「FinTechサポートデスク」を設置して、金融行政になじみのないFinTechスタートアップ企業から相談を受け、疑問に迅速に回答。有識者会議を開催してFinTechベンチャーを支えるエコシステム構築を検討するなどの支援に乗り出している。油布氏は「FinTechの可能性の大きさを踏まえ、きちんと評価して取り組むべき」という考えを示した。

FinTechの衝撃
金融テクノロジーが描く未来とイノベーションの本質

早稲田大学ファイナンス総合研究所 顧問
一橋大学名誉教授
野口 悠紀雄

ブロックチェーン技術をはじめとするFinTechの可能性を早くから訴えてきた早稲田大学の野口悠紀雄氏は、金融世界の変化について「需要の圧力が高かったところに技術的可能性が開け、急加速しています」と指摘した。FinTechは、少額送金の低コスト化で出稼ぎ労働者の海外送金需要に応えたほか、クラウドファンディングによる融資など、銀行の伝統的業務の一部を奪っているほか、証券取引も仲介不要にできることが技術的に証明されている。野口氏は「既得権益層の抵抗という問題はありますが、FinTech自体は国境に左右されず、社会経済活動を大きく変えることは間違いありません」と予想した。

FinTech:
中央銀行の視点

日本銀行 決済機構局 参事役
小早川 周司

日本銀行の小早川周司氏は、FinTechによる銀行の役割の変化や、デジタル通貨をめぐる動きを説明した。銀行は従来、決済、リスク管理等のサービスを一体的に提供してきたが、その一部をFinTechが高度化して切り出すアンバンドル化が発生。一方で、FinTechによるイノベーションを銀行自らが取り込むリバンドル化も起きている。この間、ブロックチェーンを使ったデジタル通貨をめぐっては、中国人民銀行が人民元のデジタル化に言及。また、欧州中央銀行もブロックチェーンの決済システムへの応用に言及するなど、海外中銀では、FinTechに関する情報発信が積極的に行われている。また、日本銀行でも「FinTechセンター」の立ち上げやフォーラムの開催等を通じて、FinTechをめぐる情報の共有や知見の活用を図っていきたい。小早川氏は「決済サービスの効率化を進めるとともに、安心安全な金融インフラの維持・向上に努めながら、今後の中央銀行の役割を真剣に考えていきたい」と語った。

ブロックチェーン技術の最新動向

日本マイクロソフト 執行役
最高技術責任者
榊原 彰

日本マイクロソフトの榊原彰氏は、FinTechの中でも注目度が高いブロックチェーン技術を詳説。改ざんが困難で、障害に強く、低コストで運用できる優れた技術として高く評価されているとした。レイテンシー(データ処理等にかかる時間)が遅いなどの課題はあるが改善も図られ、実証の取り組みも進む。米FinTech企業主導のコンソーシアムには世界の大手金融機関43社が参加。マイクロソフトもクラウド上で同技術の開発運用プラットフォームサービスを提供する。同技術は、金融、公共の証明、流通のトレーサビリティ等に使えることを指摘した榊原氏は「技術的に可能なことに対しては法整備が促されるでしょう」と語った。

APIバンキングによるFinTech共創戦略

日本アイ・ビー・エム
常務執行役員
銀行・フィナンシャルマーケット サービス事業部
蓑輪 圭樹

日本IBMの蓑輪圭樹氏は、アプリケーション同士をつなぐAPIを活用した、FinTech企業と金融機関の連携について語った。顧客ニーズに対応したサービスを迅速に提供するには「API連携で外部サービスを取り込むことが重要」と指摘した蓑輪氏は、IBMの取り組みを紹介。IBMのAPIバンキングプラットフォームに共通APIを構築し、それをハブに銀行側とFinTech企業側のシステムとつなぐことで、システム間の違いを吸収して連携が容易になり、外部アプリケーションと接続する際のセキュリティも強化できるという。蓑輪氏は「新しい金融サービスを皆さんと創っていきたい」と呼びかけた。

Visaの戦略について
フィンテック動向とビッグデータ活用事例

ビザ・ワールドワイド・ジャパン
取締役営業本部長
外山 正志

Visaの外山正志氏は、日本でのカード等を利用した支払比率は、世界的にも低い17%にとどまっていることから「次回東京五輪は決済インフラを他の先進国並みにする機会」と訴えた。それに向けてVisaでは、小規模加盟店向けの決済機器や、セキュリティを強化。FinTech分野では「VisaがFinTechのさまざまな企業と一緒に新たな仕組みを作り、金融機関に提供していく」と述べた。少額の個人間送金などの多様な仕組みを用意。プラスチックカードに代わる、モバイル端末を利用した決済インターフェース開発も進める。外山氏は「後に振り返って、2020年を境に現金利用がなくなった、という話ができるようになれば」と話した。

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