中国はコンテンツの墓場、日本の漫画も苦戦中 中国の出版市場で何が起きているのか(下)

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しかし、1号2号とも海賊版は確認されなかったものの、部数は期待ほど伸びなかった。そこで3号目では、読者獲得のため、値段は12元(160円程度)に据え置いたまま、ページ数を2倍の約400ページにするという事実上の値引き販売を行った。しかし、この苦肉の策も芳しくなかった。

創刊から約半年後、産経新聞の取材に角川グループホールディングスの柿沢史行IR・広報室長は「発行部数が爆発的に伸びているという状況ではないが、大都市を中心に全国で順調に巻を積み重ねている」と答えているが、現地で聞くと、今も芳しくないようだ。

講談社『勁漫画』も大苦戦中

一方の講談社は、12年5月に、月刊漫画誌『勁漫画』を創刊した。講談社は日本の出版社ではいち早く中国に進出しており、中国の出版社と提携して日本の女性誌の中国版を発行するなど、中国市場で一定の成功を収めてきた。

ところが、その講談社が漫画誌を発行するに当たって組んだ相手は、広西出版伝媒集団の子会社の理系図書専門の広西科学技術出版社。広西チワン族自治区南寧市にある地方出版社だった。

この提携に関しては、「広西科学技術出版社が、北京の開巻(語学出版大手)の傘下にあるとはいえ、まさかあんなところと組むとは」と、中国の出版関係者でさえも首をかしげた。

そんな不安が残念ながら的中して、現在、『勁漫画』は売れていない。中国人漫画家による作品のみで、その多くが新人作家ということも影響したのだろう。当初、北京を中心として23万部でスタートしたが、今は10万部にも届かないという。

オールカラー120ページで定価は8元(約100円)と、角川の『天漫』より安い。しかし、中国人作家の漫画は日本人作家とは比べものにならない。講談社では、「中国人漫画家を、日本の編集者のノウハウで育てる」という目標を掲げているが、その道のりは険しいと言うほかない。

「中国の子供はもう雑誌や本を買いません。全部ネットで済ませます。紙を買うのは、ネット環境が悪い田舎の子供だけです。だから、北京、上海では紙の本が売れなくなった。まして、漫画誌なんて無理。田舎に持って行って売るしかないでしょう」と、ある中国の出版社幹部は語る。

また、別の関係者は、こんな予測を語る。

「とはいえ、角川のほうがまだ可能性があります。というのは、角川が組んだ湖南中南出版伝媒集団を管轄する湖南省の新聞・出版総署の責任者の蒋建国は、今年3月から北京の新聞・出版総署署長(大臣級)に抜擢されるからです。彼によって、角川は今後5年間にわたって、大変優位な位置を占めることになるからです」

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