消費者物価上昇率2%達成の手段は見えず 安倍政権と妥協、日銀・白川総裁が会見

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Q 国民は物価が上昇しても賃金は上がらないと思っているのでは。

A 需給ギャップが解消して景気が良くなって物価が上がっていくというバランスの取れた経済の実現を図っていく。物価だけが上昇することは望ましくない。実体経済が改善せずに、予想物価上昇率だけが上がっていくと、長期金利が上昇する。これは財政に直ちに悪影響が出る。このような不均衡が出ないかどうか点検し、政策運営を行っていく。

Q 今回の決定は、日銀の独立性や通貨の信認を脅かすのではないか。

A 今回の共同声明は独立性にも配慮したもの。政策連携なので、一方的なものではない。物価の安定の持続可能性について書かれ、政府の成長力強化への取り組みの必要性、金融政策運営の柔軟性を確保することの重要性についても明記されている。中央銀行の独立性ということは世界的に確立された考え方であり、政府においても十分に理解されていると考えている。

とくに、わが国の厳しい財政状態を踏まえると、日本銀行のデフレ脱却への取り組みが、財政ファイナンスと受け止められたり、あるいは、日本銀行の独立性が損なわれていると考えられれば、不測の事態が起こる可能性がある。

佐藤・木内委員は金融政策への信認が傷つく恐れを指摘

Q 期限を定めないとコミットメントが不明確ではないか。

A 長く物価の上昇率が低い状態が続き、現実に1%を超えて上がってきたときにどのような予想インフレ率の変化が起きてくるのか、いまの段階で正確に見通すのは難しい。そういう状況で金融政策について一定のガイダンスを示すにはこの方式が最適だと判断した。

Q 佐藤委員と木内委員の反対の趣旨。

A 佐藤委員と木内委員の反対の理由は、第1に「消費者物価の上昇率2%」が現状で持続可能な物価の安定と整合的と考えられる物価上昇率を大きく上回ること、第2に、2%を掲げるうえでは幅広い主体による成長力強化への取り組みが必要であり、それが進まない段階で、目標を掲げると金融政策への信認が失われる恐れがあるとして反対した。

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