「メイカーズ革命」は全産業を変える 『MAKERS』著者のクリス・アンダーソン氏に聞く

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メイカーズ革命も都市部集中は変わらない

――誰でもメイカーになれる時代になれば、住む場所、働く場所は制約がなくなる。働き方やライフスタイルとかどこまで変わるのか。

産業革命は工場を拠点に起こり、人々は機械のある工場で働くために都市に移り住まなければならなかった。が、それ以前の家内制手工業の時代は、職人たちは自分が住む場所で製品を生産し、それを流通させることができた。

今のメイカーズ革命の「工場」はデスクトップとなり、私たちは大きな設備を持つ必要も、消費地のそばに拠点を構える必要もなくなった点で、家内制手工業時代に戻ったといえる。ウェブのおかげで、スマホを使って簡単にものを作る工場にアクセスできるようにもなった。

しかし、メイカーズ革命の拠点を見ていると、都市部に集中している傾向がある。それは安い労働力や大きな工場があるからではなく、製品アイデアを持っている人やそれを実現するデザイン技術を持った人々が都市部に多いことがあげられる。

日本で見たラボはすべて東京や名古屋など都市部にあるが、それは驚きではない。そういった場所にデザインスキルのある人が多い。クリエイティブな場所で起きやすいのがメイカーズ革命だ。

そういった点はウェブに似ている。ウェブの場合も場所を選ばないが、だいたいにおいてクリエイティブな人がウェブをやっていて、そういう人たちは都市部に住み、ほかのクリエイティブな人々と集まりを形成している。今やモノ作りにとって大切なのは、アイデアやデザイン力で、工場や設備にアクセスがあることではなくなった。

――ところで、『WIRED』誌をやめて、3Dロボティクスの仕事に専念することになった。

『WIRED』には12年以上勤めたし、今回の事業が予想以上に早く成長していることもあって辞めることにした。3Dロボティクスは40人の従業員を抱える企業に成長し、ベンチャーキャピタルからの投資も受けられるようになった。

私の人生における次の章として十分すぎるほど大きく、エキサイティングな事業に育っている。子どもたちの科学の実験がきっかけでメイカーズ革命にかかわり、起業することになって、最終的に専業になる。まさに「有言実行」というわけだ。

倉沢 美左 東洋経済 記者

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くらさわ みさ / Misa Kurasawa

米ニューヨーク大学ジャーナリズム学部/経済学部卒。東洋経済新報社ニューヨーク支局を経て、日本経済新聞社米州総局(ニューヨーク)の記者としてハイテク企業を中心に取材。米国に11年滞在後、2006年に東洋経済新報社入社。放送、電力業界などを担当する傍ら、米国のハイテク企業や経営者の取材も趣味的に続けている。2015年4月から東洋経済オンライン編集部に所属、2018年10月から副編集長。 中南米(とりわけブラジル)が好きで、「南米特集」を夢見ているが自分が現役中は難しい気がしている。歌も好き。

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