大型経済対策は本当に必要だったのか 総額13.1兆円の緊急経済対策に潜む問題点

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日本の社会インフラは老朽化が進んでおり、これを維持補修・更新するための費用が大きく膨らんでいる。国民経済計算で維持補修・更新費用に相当するのは「固定資本減耗」だが、一般政府の総固定資本形成に占める固定資本減耗の割合は100%近い水準まで上昇している。

このことは、固定資本減耗分を全て維持補修・更新すれば新規投資は全くできないことを意味する。もちろん、公共投資の総額を大幅に増やせば維持補修・更新と同時に新規投資を行うことも可能であるが、深刻な財政状況を考えれば、現実的とは言えない。

民主党政権が公共事業の削減を進めたという印象もあるが、公共投資の水準がピークをつけたのは、それよりはるか前の90年代半ばである。人口動態面から考えれば、高齢化の進展に伴い貯蓄率とともに投資率が趨勢的に低下していくことはいわば必然とも言える。

実際、国全体の投資率(固定資本減耗を除いた純ベース)は長期にわたり低下し続け、09年度からはマイナスとなっている。一般政府はかろうじてプラスを維持しているが、民間部門(企業+家計)がマイナスとなっているためである。

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