事業承継

事業承継問題、どう考え、何を準備すればいいか。 中小企業が未来のために今できること

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かつては親から子への事業承継が当たり前だった。だが今、それが難しくなってきている。なぜ事業承継が困難になってきているのか。その解決方法はあるのか。これから事業承継問題に直面するであろう企業経営者は、何を準備すればいいのか。中小企業施策の総合的な実施機関として事業承継の支援にも力を入れている中小企業基盤整備機構の高田坦史理事長に聞いた。

減り続ける日本の中小企業

―事業承継の現状はどうなっているのでしょうか。

独立行政法人中小企業基盤整備機構 理事長
高田 坦史
1969年神戸大学経済学部卒業。同年トヨタ自動車販売(現トヨタ自動車)入社。宣伝部長、取締役、常務役員、専務取締役(グローバル営業企画本部、商品企画部等担当)、トヨタ名古屋教育センター会長、トヨタマーケティングジャパン社長などを経て、2012年から現職。

高田 まず挙げなければならないのは、中小企業の数そのものが減っているということです。ピーク時の1986年には全国で530数万社ありましたが、現在は381万社です。この2年ほど減少カーブはやや緩やかになりましたが、バブル崩壊以降中小企業は減り続けているのです。端的に言えばそれは、新規の起業件数より廃業や倒産する企業のほうが多いということです。もちろんその中には競争に負けたり、社会的・時代的役割を終えたりして廃業する企業も含まれています。問題は、事業性が優れ、将来の可能性があるにもかかわらず廃業に追い込まれる企業があるということです。そこを何とかしなければいけません。

―その原因は、後継者がいないということでしょうか。

高田 それが大きな原因の一つです。親族に後継者がいなければ従業員や役員が継げばいい。あるいは第三者に譲っても構わない。そういう経営者が増えてくればいいのですが、現状はなかなかそうではないということです。

今、中小企業経営者のほぼ半数が60歳以上というデータがあります。一方、事業承継をする年齢は、平均70歳前後です。つまり今後10年の間に、日本の中小企業の半数が事業承継の問題に直面することになるのです。ところがアンケート調査などで聞くと、今後の予定について約半数の経営者は廃業すると答えています。つまり381万社の4分の1に相当する100万社弱の中小企業が今後10年の間に廃業するかもしれないという現状があるのです。日本の経済を支えているのが中小企業だということを考えれば、これは大変ショッキングな数字でしょう。

全国にある事業引継ぎ支援センター

―そのような問題に対する有効策はあるのですか。

高田 一つ言えるのは、情報の非対称性の問題があるということです。

片方に事業性はあるのに後継者がいないという企業があり、一方には将来性のある企業ならば経営に参画してみたいと考えている若い人がいる。しかし企業の経営者は、そういう人がどこにいるのか分からない。そういう情報のすれ違いがあります。だからそれをマッチングさせる必要があります。たとえば可能性のある中小企業なら経営にチャレンジしたいと考えている人は、大手企業にも間違いなく存在します。ですから大手企業の人事部と提携するというのも一つの方策として考えられます。

そういう情報をマッチングさせることは既にビジネスになっていますが、対象が中規模以上の企業であることが多く、小規模企業にまで手が回っていないのが実情です。そこで当機構は後継者を探している中小企業のデータベース化を図っています。まだ登録件数は8000社ほどですが、これを今後さらに充実させていく方針です。

―国が全国に展開している事業引継ぎ支援センターはどのような機能を持っているのでしょう。

高田 売りたい企業と買いたい企業を結ぶ支援を行っています。各地のセンターは銀行や信用金庫などの金融機関や商工会議所などとも連携しており、それぞれの課題に応じた専門家がおりますから、どんな相談にも対応できます。センターの全国展開を終えたのが昨年度で、平成23年10月以降の相談件数は累計で1万件を超えました。当機構は中小企業事業引継ぎ支援全国本部として各地のセンターをバックアップし、これまでにも数多くの小規模M&Aが成立しています。

早めに手を打つためにも
まず第三者に相談を

―事業承継に対して経営者はどういう準備をすればいいのでしょうか。

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