校長の給料は安すぎる。1500万円でもいい

藤原和博(その8)

過去10年、日本の仕事をめぐる状況は様変わりした。
10年後に食える仕事 食えない仕事』。仕事の未来をマトリックスで4分類。
インド、中国では毎年数百万人単位でハングリーな大卒者が誕生。また、ネット・通信環境が大きく改善したことで、定型業務やIT開発を新興国へアウトソーシングできるようになった。仕事の枠を日本人同士で争っていればよい、という時代は終わった。さらに、人口減少に伴う国内マーケットの縮小も追い打ちをかけている。
これから日本の仕事はどう変わるのか? 10年後にも食えるのはどんな仕事なのか。当連載では、ベストセラー『10年後に食える仕事 食えない仕事』の著者であるジャーナリストの渡邉正裕氏が、"仕事のプロ"たちとともに、仕事の未来像を探っていく。

(司会・構成:佐々木紀彦)

【対談(その7)はこちら

——前回の対談まで、仕事の未来予測を中心に話してきましたが、今回の対談では、もう少し政策面や教育面に踏み込んで議論したいと思います。藤原さんは、民主党政権で開かれた、内閣府「雇用戦略対話」の委員を務めていましたが、そこで感じたことはありますか?

藤原:雇用戦略対話では、この対談シリーズのような議論を、本当はやらなきゃいけなかったはずです。でも、そんな話は出なかった。まあ、戦略性はなかったですね。

厚労省の息がかかった委員は、官庁にとって都合のいいことしか言わない。それに、経産省の副大臣は1回目と2回目の会議は途中退席で、3回目と4回目はずっと居眠り。これには怒ったね。

4回目の会議までに、内閣府の意図が、自分とは相容れないものだとわかったので、委員を離脱したんです。結局は、各省の「キャリア教育の充実」「ハローワークの強化」「キャリアアップ支援の拡大」意向を反映して、対処療法の拡充と予算増額を国に要望する会議だったんだと思う。この例にかぎらず、もう審議会みたいなシステムそのものがダメだね。

——教育政策の分野ではいかがでしょうか? たとえば、安倍新政権に期待することはありますか?

藤原:安倍さんには言いたいことですか。前回の安倍政権で、教育再生会議が、教科書の3割増量を決めたでしょ。これで何が起きたかというと、教科書3割増に対し、授業時間は1割しか増えなかったから、教育が詰め込みに戻っちゃったわけですよ。

世の中の企業や国際社会が必要としているのは情報編集力のほうなのに、また情報処理能力のほうに戻ってしまった。これは、非常に自己矛盾。産業界が求めていない「自分で考えない人材」を、大量生産し続けている状況を推進したわけです。

一方、教育再生会議の功績は、全国学力調査をやって、それを各県で発表したこと。あれをしなければ、橋下徹さんが、「大阪の成績は沖縄を除くと全国でビリだ」と非常事態宣言を出して、私が特別顧問として、大阪の教育改革を手助けすることもなかったと思う。その後、大阪の学力は4年連続で上がっていて、小学校の算数の学力は全国平均を上回っているんですよ。だから全国学力調査をやって、自治体のデータを発表したのは偉かった。

道徳を国が教えることの違和感

もう一つ、再生会議の教育政策で私が批判し続けたのは、「心のノート」という道徳の教科書を作ったこと。数億円の予算をかけて、心のノートという道徳のサブテキストを、全国の小中学校に1500万部くらいばらまいたんです。この政策の発端は、旧保守派の人たちが、「道徳はどうなっているんだ。ちゃんと教育しているのか」と言い始めたこと。彼らは、いじめ事件が起こるたびに、そういうことを言い出す。そして実際に、道徳のサブテキストを作っちゃったわけ。

でも、道徳とは何かを国家が上から決めて、検定教科書を作るのはおかしいでしょ。そんなことをやったら、また昔のやり方に戻るだけ。道徳を教科化すべしという議論もされたようなんだけど、そうすると通信簿にも道徳という評価項目を作らないといけなくなってしまう。本来、「思いやり」とか「郷土愛」とか「愛国心」とかは教科書で教員が教えるものではなく、人と人の間に育まれるものだと思うんだけどね。

編集部注)心のノートは、民主党政権下で仕分けの対象となり、2011年度からは、配布ではなく、文科省ホームページにデータを掲載する形に変更された。

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