マセラティのSUV「レヴァンテ」に乗ってみた ポルシェ「カイエン」と伍する存在になれるか

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ライフスタイル誌のジャーナリスト向け試乗会は、ミラノから1時間半ほどのドライブで到着するリゾート、ガルダ湖が選ばれた。峻険な山に囲まれた氷河湖で、岸壁をくりぬくように作った湖畔の道は曲がりくねっているうえに狭く、さらに山に登ってもやはり道はくねくねとどこまでも続く。まことにヨーロッパ的ともいえるコースである。そこを走って、レヴァンテのすごさを垣間見ることが出来た。

 

日本に入ってくるレヴァンテは3モデル。エンジンは3リッターV型6気筒で、ガソリンは出力が違うモデルが2つ。350ps(257kW)の「レヴァンテ」(1080万円)、同じエンジンながら430ps(316kW)にチューンナップされた「レヴァンテS」(1279万円)だ。発売は2016年秋。2017年にはディーゼルの「レヴァンテ・ディーゼル」(価格未定)が加わるという。

操縦すること自体を楽しめるモデルだ

僕が乗ったのは、ガソリンの2モデル。端的に印象を言うと、ともに期待以上にスポーティだった。美点はハンドリング。SUVとは思えないほど反応が早く、路面の状況もステアリングホイールにしっかり伝わる。一般道では余裕あるサイズのセダンなみにしなやかな乗り心地で、カーブを曲がるときの車体の動きは安定している。要するに楽しいのだ。

着座位置もヨンク的に下を見下ろすような感じでなく、セダンに近い感覚だ。仮にヨンクの目的が悪路を含めてあらゆる道を制覇しながら前へ前へと進んでいくことにあるとしたら、レヴァンテは対極的。操縦すること自体を楽しめるモデルなのだ。

「後輪駆動的な操縦感覚を大事にしました」とマセラティの車両開発を統括するロベルト・コラーディ氏が僕に語ってくれた通りの印象だ。車重は2トンあるが、トルクの出かたも絶妙な設定で、アクセルペダルを軽く踏み込んだだけで軽快な出足で、そこから加速していくときにもモタモタした感じはない。V型6気筒に理想的といわれる60度のバンク角を持つエンジンは嫌な振動は皆無で、回転を上げて走るスポーティな感覚もしっかり味わえるのだ。

コラーディ氏によると開発段階で意識したのはポルシェ カイエンだという。レヴァンテのインテリアの雰囲気はカイエンとまったく違う方向を見ている。カイエンが上質なミルクだとしたら、レヴァンテは上手なカクテルといってもいいかもしれないと僕は思った。

レザーをふんだんに使ったぜいたくな内装

革をふんだんに使ったダッシュボード、シート、ドアトリムは独特の世界を作り出している。シートには最上級オプションで、エルメネジルド・ゼニア社のシルク素材を使った「ゼニア・エディション・インテリア」も選べる。これこそマセラティ独自の味わいだ。

(文:小川 フミオ)

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