孫社長の後継者「アローラ電撃退任」を追う 匿名投資家による疑惑の指摘は主に7項目

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ニケシュ氏のツイートによれば、転職先は決まっておらず、余裕を持って次の職を探すという。つまり、急いでやめる理由はなかった。7月にはソフトバンクの顧問に就任したが、これはインドのある投資先の面倒を見るためだけだ。

孫社長は「ニケシュほどの人物を待たせるわけにはいかない」と主張したが、転職先が決まっていないのであれば、顧問より責任のある職に就ける選択肢も十分にあったはずだ。

これで「一件落着」とはいかない?

ニケシュ氏は「クリーンチット(インドの無罪証明書)をもらった。次に行く時だ」ともツイートしている。ということは、社長就任が数年先に遠のいたことが判明した3月の新会社設立時点で辞意は固まっていたが、特別調査委員会の調査が完了するまで待ったのだろうか。さらに、「お粗末な投資成績」「実績がないのに報酬が高額すぎる」という書簡の批判を気にしていて、6月に保有株売却を行ったのかもしれない。

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このうち、アリババ株は9カ月前から計画していたというから当てはまらなさそうだが、退任当日のスーパーセル株売却はまさに投資成績の高さを示したものだった。

6月30日には米証券取引委員会(SEC)がニケシュ氏を調査している、との米メディアの報道がなされている。この調査のきっかけも上記の書簡だという。どうやらニケシュ氏の退任で一件落着というわけにはいかなさそうだ。

今回、孫社長やニケシュ氏が株主総会で言ったこと・言わなかったこと、退任発表当夜のニケシュ氏のツイッター、匿名投資家からの書簡の全訳など「週刊東洋経済7月9日号」(7月4日発売)ではさまざまな資料を読み解き、電撃退任の真相に迫っている。

山田 雄一郎 東洋経済 記者

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やまだ ゆういちろう / Yuichiro Yamada

1994年慶応大学大学院商学研究科(計量経済学分野)修了、同年入社。1996年から記者。自動車部品・トラック、証券、消費者金融・リース、オフィス家具・建材、地銀、電子制御・電線、パチンコ・パチスロ、重電・総合電機、陸運・海運、石油元売り、化学繊維、通信、SI、造船・重工を担当。『月刊金融ビジネス』『会社四季報』『週刊東洋経済』の各編集部を経験。業界担当とは別にインサイダー事件、日本将棋連盟の不祥事、引越社の不当労働行為、医学部受験不正、検察庁、ゴーンショックを取材・執筆。『週刊東洋経済』編集部では「郵政民営化」「徹底解明ライブドア」「徹底解剖村上ファンド」「シェールガス革命」「サプリメント」「鬱」「認知症」「MBO」「ローランド」「減損の謎、IFRSの不可思議」「日本郵政株上場」「東芝危機」「村上、再び。」「村上強制調査」「ニケシュ電撃辞任」「保険に騙されるな」「保険の罠」の特集を企画・執筆。『トリックスター 村上ファンド4444億円の闇』は同期である山田雄大記者との共著。

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