政界渡り鳥「小池都知事」の可能性はあるのか 政治的空白を突いた出馬表明の行方

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そんな小池氏に対して、公明党は慎重な姿勢を崩さない。その理由について前述の自民党関係者は、宗教絡みの問題ではないかと推測する。

「小池氏は2009年の衆院選で、幸福の科学の支援を大きくアピールしたことがある。創価学会を支持母体とする公明党にとって、応援しにくいのではないか」。

しかし主な理由は別のようだ。実は公明党の一部に「できるだけ自公民協力の枠を作りたい」という思惑があり、そうなれば小池氏の支援は不可能になる。

自公民が協力して推せる候補者は?

都議会民進党も当選できる候補の擁立を望んでいるため、自公民協力には反対ではない。6月29日に開かれた東京都連の会合では、江田憲司党代表代行、長島昭久衆院議員、柿沢未途衆院議員、海江田万里前民主党代表の名前が上がったが、このうち都議会民進党が推したいのは長島氏だ。ただ長島氏は2014年の衆院選で比例復活したために「小選挙区で当選しなかったのに、知事選で当選できるはずがない」という批判があるが、石原氏の秘書を務めたことのある長島氏なら自民党や公明党の一部も乗ることができるだろう。

だが民進党本部はこうした動きに反対で、枝野幸男幹事長は都議会民進党に「参院選の最中に勝手に動いたら反党行為と見なす」と警告した。党本部としては次期衆院選も視野に入れ、共産党とも選挙協力ができる候補を選定したいという思惑がある。一時は前鳥取県知事で民主党政権時に総務大臣を務めた片山善博氏擁立に動きだしたが、片山氏は出馬を否定している。

では誰が擁立されるのか。7月1日午後には自民党東京都連が増田寛也前岩手県知事の擁立を検討しているという一報が入った。第1次安倍改造内閣と福田内閣、同改造内閣で総務大臣を務めた増田氏は、「出馬の可能性はゼロではないのか」と言う記者の質問に「お任せします」と答えて含みを残している。

小池氏も同日、自民党東京都連に推薦を申請し、引っ込む様子は見せていない。これまで何度も逆転劇を演じてきたため、自分の運には自信があるのだろう。実際に萩生田光一内閣官房副長官は6月29日の会見で小池氏を「都連執行部に何ら相談なく(出馬の)意思を表明することは違和感がある」と批判したが、翌30日には「有力な候補の一人として対応を考えていくことになる」と一転して評価している。

いずれにしろ久々に表舞台に姿を現した小池氏。混沌としながらも都知事選に向けた戦いは動き始めている。
 

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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