自民党一党優位は、あくまで「過渡期」 塩田潮の政治Live!

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総選挙で自民党一党優位が復活した。二大政党政治は終わった、あるいは日本にはもともと不向きだったという見方も出ている。

「権力は接着剤」というのが自民党の共有意識で、分裂は起こりにくいから、次期総選挙まで二大政党政治でなくなるのは間違いない。

にもかかわらず、長期的には「二大政治勢力」の結集に向かうだろうと見る。現在の自民党一党優位の復活、野党の多党化は、そこに至る途中の一時的な現象という見立てだ。

冷戦終結後の状況をよく見ると、体制の選択や外交の基本路線、財政の将来像などの大きな政治選択では、一部の政党を除き、政党間に大きな差がなくなった。ところが、自民党も民主党も、幅広い支持層を当てにして、国民の多様なニーズを汲み上げる「包括政党」「ごった煮政党」で、政策や路線を曖昧にしたまま政権を担当した。

その隙を衝いて、個別のテーマを強く主張する勢力が台頭するから、いったんは多党乱立の動きが出る。

いまや包括政党は自民党だけだが、安倍路線にもかかわらず、実態は多様なグループの集合体だ。

3~4年は自民党一党優位が続くが、大きな政治選択でなく、政策の決定力や実現力を競う時代だから、次期総選挙で民意が「自民党政治ノー」と回答する可能性は小さくない。その前に国民の自民党離れが起これば、「接着剤」の効用が消え、「緩やかな多党政治」に向かい始める。その結果、二大政治勢力再結集の流れになると見ている。

国民が政権を任せる政治勢力とトップリーダーを自ら総選挙で選択するという代議制民主主義の現行システムの有効性を認識し、それを実行するという強い意思を持っていると思うからだ。

3回連続の「大勝・惨敗型」の総選挙は国民の政権選択の表れである。

二大政治勢力再結集には、第一にそれが重要と考える民意の強い支持、第二に「ごった煮」を超える新しい対立軸の提起、第三に再結集の実現に邁進する型破りの指導者が必須条件だ。3~4年はすぐに経過する。ただちにその準備を始めなければ間に合わない。

塩田 潮 ノンフィクション作家、ジャーナリスト

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しおた うしお / Ushio Shiota

1946年、高知県生まれ。慶応義塾大学法学部政治学科を卒業。
第1作『霞が関が震えた日』で第5回講談社ノンフィクション賞を受賞。著書は他に『大いなる影法師―代議士秘書の野望と挫折』『「昭和の教祖」安岡正篤』『岸信介』『金融崩壊―昭和経済恐慌からのメッセージ』『郵政最終戦争』『田中角栄失脚』『安倍晋三の力量』『危機の政権』『新版 民主党の研究』『憲法政戦』『権力の握り方』『復活!自民党の謎』『東京は燃えたか―東京オリンピックと黄金の1960年代』『内閣総理大臣の日本経済』など多数。

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