ルネサスは手元資金3986億円で何を買うか 呉新社長は得意分野で優勝を目指す

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今後は、「優勝」を目指す戦略セグメントと相性のいい相手先を買収の候補としていく。2016年3月末時点でルネサスには3986億円もの手元資金がある。現在、4~5社ほどに具体的な候補を絞り、コンタクトをとっている最中だという。

さらに、注目が集まるのが、大株主の産業革新機構が保有するルネサス株69%の行方だ。2015年9月には産業革新機構のロックアップ(株式売却禁止期間)が解除され、ルネサスの買収先としてドイツの競合であるインフィニオンテクノロジーやソニーなど様々な企業名が報道されてきた。呉氏の古巣である日本電産の永守重信会長兼社長も、ルネサスについて「買収したい会社の一つ」と公言している。

自主自立を貫けるのか

これについて呉氏は、「特定のメーカー傘下でなく幅広い機関投資家に株を持ってもらいながら戦うのが世界の勝ち組」だと説明。特定のメーカー傘下では供給先が限られることを理由に「幅広い株主構成の中でやっていきたい。産業革新機構にも伝えている」と、買収をけん制した。

就任半年でルネサスを去った遠藤氏(右)と作田氏(左)。自主自立は、ルネサスが誕生した当時から現在に至るまでの課題だ

特定のメーカーの“半導体部門”ではなく、あくまでも「自主自立」の半導体企業として成長路線を追求することを明言した呉氏。日立製作所、三菱電機、NEC3社の半導体部門が統合して設立したルネサスにとって、一企業としての「自主自立」はかつて構造改革を主導した作田久男元CEOも掲げてきた命題だ。

だが、昨年には遠藤隆雄前CEOが産業革新機構との経営方針の対立によってわずか半年で辞任しており、「自主自立」への道のりはいまだ遠いことをうかがわせた。「昨年は(遠藤氏の辞任で)混乱を招いた。今度は絶対に失敗しないでやってほしい」と産業革新機構側から声をかけられたという。自主自立を貫けるか、呉氏の課題は大きい。

東出 拓己 東洋経済 記者

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ひがしで たくみ / Takumi Higashide

半導体、電子部品業界を担当

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