アップルが建設中の新社屋はこうなっている 最新のAppleStoreは、まさに"アップル製品"

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Plazaには、滝が流れる15メートルもの緑の壁がそびえ立っており、癒しの空間を演出している。アップルは2016年3月のイベントで、地球環境への配慮を企業の重要なミッションとし、iPhoneのリサイクルや、100%再生可能エネルギーへの転換に言及している。

Apple Union Squareの屋根にももちろんソーラーパネルが備わっており、店舗で使用する電力のすべてをまかなうという。そのための工夫も随所に見られる。

たとえば、均等な明るさを作り出すLED照明と、真っ白な床材の組み合わせによって、少ない電力で十分な明るさを確保する。加えて屋外の光を取り込むことも、省電力化への工夫だ。また建物全体で風が下から上へ抜ける自然吸気システムを採用し、冷房は床を水で冷やす方式だという。
快適さと環境配慮を両立させる、巧妙な設計は、無駄がない内部構造と効率的な体験を作り出すアップル製品さながらだ。

そしてApple Campus 2へ

美しい建物と新しい体験を、地球環境へのに配慮しながら作り上げる。そんな針の穴を通すような設計を試す理由は、アップルが現在建築している、より巨大な建造物のテストのような位置付けも垣間見ることができた。

2016年3月撮影のApple Capmus 2。手前のクルマと比較すると、ガラス1枚の巨大さがわかる。

冒頭に記したように、アップルは、クパティーノ市に、新社屋であるApple Campus 2を建造している。

Apple Campus 2も、ガラスの壁面を持つ4層構造を採用する、巨大な円板型の建物だ。設計はApple Union Squareと同じフォスターが担当しており、たとえば新店舗で用いられた白い床材はApple Campus 2にも使われるなど、共通点を見いだすことができる。

屋根はソーラーパネルで敷き詰められ、燃料電池への蓄電も行い、使用電力100%を再生可能エネルギーでまかなう。アップルは「Apple Energy LLC」という会社を設立し、余った電力をスマートグリッド向けに販売するとみられている。

 

新社屋の完成イメージ。屋根はソーラーパネルで敷き詰められる

体験と環境配慮を核としたビジネスを圧倒的なスピードと規模で進めていくアップルの取り組みについては、その結果や業績に与える影響なども含めて、引き続き注目して行くべきだと考えている。

同時に、アップルが、個人や周囲の企業に対してどのような啓蒙を行っていくのか。いずれにしても、我々の日々の暮らしの、ひとつの未来の姿を見いだすことができることは、間違いないだろう。

松村 太郎 ジャーナリスト

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まつむら たろう / Taro Matsumura

1980年生まれ。慶應義塾大学政策・メディア研究科卒。慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)、キャスタリア株式会社取締役研究責任者、ビジネス・ブレークスルー大学講師。著書に『LinkedInスタートブック』(日経BP)、『スマートフォン新時代』(NTT出版)、監訳に『「ソーシャルラーニング」入門』(日経BP)など。

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