日産と三菱自、EV陣営“生みの苦しみ” 政府がインフラ整備に大盤振る舞いも、予算は大幅未消化

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充電スタンド整備に対する補助事業は、「クリーンエネルギー自動車等導入促進事業」としてすでにこれまで実施されている。この事業は、EV、PHVやクリーンディーゼル自動車、充電スタンド本体の購入に対して補助金を出すというもの(エコカー補助金とは別もの)。充電スタンド本体価格の最大2分の1を補助している。

2012年度予算では11年度の積み残し分を含め440億円が計上されているが、12年12月26日時点で補助金申請が受理されたのは122億円、そのうち充電スタンドに対しては5億6115万円が受理されているに過ぎない。年度末までには、これからある程度は増えるだろうが、予算消化は程遠い状況だ。なお、同事業は2013年度の概算要求にも継続して盛り込まれているが、内容が重複する部分は、補正予算に組み込まれる見込みだ。

自動車課では「補正予算の新制度では、設置工事費にも補助金を出すようにしたほか、自治体の計画に沿えば補助率が大幅に上がる。整備は進むと見ている」と強調する。

運用コストがネックになるか

実質的な補助率が上がるのは確かに追い風だろうが、設置すると運用コストがかかってくる。そもそも肝心の電気自動車(乗用車)はまだ全国で4万台程度しか普及していない。利用料金で投資コストや運用費用を回収するのは、当面は不可能だ。

そのうえ、急速充電器の規格は現在、日本勢の推す「チャデモ」方式と、欧米勢が推す「コンボ」方式が、規格争いをしており、日本勢はやや劣勢。将来的にコンボになった場合や、併存になった場合は、無駄な投資になりかねない。

政府の重点施策の1つとはいうものの、整備が一気に進むにはハードルがありそうだ。EV陣営の悩みは尽きない。

(撮影: 今 祥雄 *タイトル下写真)

丸山 尚文 東洋経済 記者

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まるやま たかふみ / Takafumi Maruyama

個人向け株式投資雑誌『会社四季報プロ500』編集長。『週刊東洋経済』編集部、「東洋経済オンライン」編集長、通信、自動車業界担当などを経て現職

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