賃金を上げるには成長戦略が必要 米国のインフレ率2%の理由は生活コスト上昇

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また、高齢化の問題に直面している日本にとって、アジアの成長を取り込んでいくことも非常に大事である。その点では、安倍政権は現時点では適切な方向性を示している。

中国は政治的に大きなリスクがある国だが、一方で、日本経済にとって中国を無視することは現実的に難しい。OECDが12月に発表した経済予想では、購買力平価ベースの世界GDPに占めるシェアは、11年は米国23%、ユーロ圏17%、日本7%、中国17%だったが、2030年には米国18%、ユーロ圏12%、日本4%、中国28%となる。

日本の経済回復へ、日中間の関係修復が大事

1月上旬に中国に出張したが、反日ムードは昨年9月、10月の出張時に比べれば表面的には大幅に後退している。中国のメディアを見ていると、安倍政権の対中外交を見極めようとする記事が現在は非常に多いことに気がつく。尖閣諸島問題をあおろうと挑発してくる勢力が存在するのは事実だが、一方で、地方政府、企業の中には、日本との関係を修復させたいと願っているところも多い。

日中間の経済関係を深めることは、日本経済の早期回復につながるだけでなく、結局はそれが最大の安全保障策になるだけに、安倍政権がプラグマティックなアプローチを今後も続けていくことができるかが注目される。

 

加藤 出 東短リサーチ社長

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かとう いずる / Izuru Kato

1988年、横浜国立大学経済学部卒業、東京短資入社。金融先物、CD、CP、コールなど短期市場のブローカーとエコノミストを2001年まで兼務。02年2月よりチーフエコノミスト。13年2月より東短リサーチ代表取締役社長。短期金融市場の現場から各国の金融政策を分析。『日銀は死んだのか?』『バーナンキのFRB』『日銀、「出口」なし! 異次元緩和の次に来る危機』  など著作多数

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