夏野剛(上)「オタクが100人のエリートに勝つ」 IT・ネットが変えた個人と組織の関係

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生物学的にクリエイティビティ(創造力)とか競争力の源は、多様性なんです。多様性のないグループは死滅する可能性が高い。新卒で入社した人だけで出世レースをやって、30年後に役員に到達するのは数人。その中から社長を選ぶ。

絶滅へのプロセスですよね。それをわざわざつくっているんです。組織を壊さないで維持しようとするあまり、個人を定期的に異動させたり、一律の新入社員教育や研修をやったり。やればやるほど個性を潰していく。大企業からイノベーションが起こりにくいのはそのせいです。

高度成長期には多様性を確保するのは、人事評価を含めて面倒だった。だから、あえて一律な組織にして、その代わり大量生産の効率を求めた。右肩上がりのときはそれでよかったんですよ。今、経済全体が低成長、あるいはマイナス成長になってくると、みんなと同じことをやるとマイナス成長になってしまう。

みんなと違うことをやるってことは、イノベーティブ、クリエイティブなことを思いつくってことですよね。それは一律性とはまったく逆の方向。多様性です。組織のつくり方、採用の仕方が一律性を重視して、年功序列のために一定の年限にならないと、組織の上に立てないというのは、競争力がなくなるに決まっているじゃないですか。生物の争いの世界では滅びる種ですよ。その滅びる種のやり方を日本の大企業はいまだに改められないんですね。だから、急速に競争力がなくなっている。

均一性を求める日本の弱み

――具体例を挙げると。

大手の電機メーカーは全部そうです。あと金融機関。米国がなんでもいいというワケではないが、米国の企業が強いのは、マネージメントもグローバライゼーションしているし、いろんな人を入れているからじゃないですか。シリコンバレーなんてインド人や中国人がいっぱいいますからね。人種のるつぼですよ。

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