都内「痴漢被害」7割が電車や駅で起きている 女性専用車、防犯カメラの設置進む鉄道各社

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鉄道各社で運行されている女性専用車(写真:bunnbukuP / PIXTA)

先の報告書では、インターネット上で行ったアンケートの結果も公表されており、「痴漢を防止するために効果的だと思うこと」としては「女性専用車両」が52.8%でもっとも高く、次いで「防犯カメラ」が45.3%、「警察の取り締まり強化」「駅や電車内での警察官やガードマンの警戒」が38.5%となっている。

一方、防犯カメラの設置については避けて通れない別の問題もある。2002年ごろ、住民基本台帳ネットワークシステムの導入に際して、個人情報とプライバシーの問題が議論を呼び、関連して街中の防犯カメラ=監視カメラに関する話題が注目を集めた。

そういう議論の記憶が残る立場からすると、車内の防犯カメラ設置には、疑問もなくはない。実際、先の報告書のアンケート結果では、防犯カメラ設置が痴漢防止に役立つと思うかという問いに対し「そう思う」「ややそう思う」との回答が計83.6%に達する一方、「防犯カメラはプライバシー侵害になるか」との問いに対して「そう思う」「ややそう思う」と答えた人も47.6%に上り、効果への期待とともに監視への懸念が根強いこともうかがえる。

痴漢の発生件数公表を

乗っていれば時間どおりに目的地にたどりつく、安心して乗ることができる、安全だという日本の鉄道の「信頼」は、鉄道事業者だけではなく、乗客も参加することで成立している。いわば、鉄道への「信頼」は、鉄道にかかわるすべての人たちの協力によって成り立っているものだ。その信頼を破壊する痴漢の撲滅には、まず被害が多発していることを知り、無関心を解消することが重要だ。

冒頭でも記述したが、痴漢に関するデータは限定的だ。路線別検挙数のデータは、前述した2011年の報告書を除けば、「そういった統計は取っていない」(警察庁)という。人々の無関心を解消し、有効な対策を考えるためにも、まずは電車内での痴漢発生状況について統計をまとめ、データとして可視化することが必要ではないだろうか。

小林 拓矢 フリーライター

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こばやし たくや / Takuya Kobayashi

1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。在学時は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。著書は『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)。また ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)に執筆参加。

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