人事部が目覚めれば生産性は「10倍」上がる 八木洋介LIXIL副社長が語るワーク・ルールズ

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多くの企業は、伝えるためにルールを作ります。守らないと評価しない、おカネをあげない、とやるわけです。そんなことより、「変わったら、どんないいことがあるのか」「なぜ変わらなければいけないのか」をワクワクする形で伝えていくのが、私は人事の役割だと思います。それは、今いる人たちのアウトプットを最大に引き出すことです。

「これはルールだからやってください」と言うのと、「私たちはこんな素晴らしいことをやろうとしているから頑張ろう」と言うのと、どっちがやる気になるかはわかりますよね。

今、目の前にお茶がありますが、お茶に「いやぁ、お茶君、君は偉いね」と言っても、残念ながら味は変わらない。でも、私が社員に意識的に「君はいい仕事をしている」と言えば、明日から5倍ぐらい仕事しますよ(笑)。さらに「これは面白い」と思えば、アウトプットは5倍や10倍どころじゃないですよ。それが人間の本質なのです。

人に寄り添う人事は、面白い、やってやろうという気持ちを引き出すのが仕事だと思います。ルールを作ることではない。人事管理が仕事だと思っているとルールづくりに精を出し過ぎてしまいます。

――人事がやる気を引き出す。この考え方は、巨大企業であればあるほど、他の会社との差が出そうです。

ものすごく出ますよね。GEにいたときに、マニュファクチャリングの生産性を一度はかったことがあります。結果は、1人当たりの売上げが競合の2倍ありました。やる気の出る集団を作れば、GEでも倍になるのです。社員みんなを活性化できたら、5倍はいくでしょうし、LIXILだってGEと同じくらいの結果は出せるはずだと思っています。

「行列のできる人事」をめざす

――お話を伺っているだけで、僕自身の生産性も上がりそうです(笑)

人間はそういうものだと思うんです。私の人事の考え方で、「人が集まっていたら行け。集まっていなければ集めて、話をしろ。人事の人間が話をすることで、やる気の出る体制を作れ」というのがあります。

人事と言えば、「あいつらと話をしたくない」とか、「人事に異動した瞬間に友だちがいなくなる」などの、「あるある」がありますよね(笑)。そういうのは最悪です。人事には、人がいっぱい来てくれなければいけない。だから、私は「行列のできる人事になりなさい」と言っています。私のところには、夫婦喧嘩の相談に来る人もいますからね(笑)。

それから、呼び込むよりも行くほうが、相手はよっぽどやる気が出ます。やる気を出してもらうことは、簡単なことなのです。特に頭を使わなくても、ただ相手の所に出掛けて行くだけで違いが出せるのです。この本に出ているグーグルも、誰でも気がつきそうなことをやっていて、難しいことをしているわけではありません。

――人事は、自分から能動的に動いていく熱い仕事なのですね。

そうです。だから、人事の仕事が人事管理だと思っているところがおかしい。人事の仕事は、人と組織を通して会社のパフォーマンスと業績を上げることに尽きるのです。

その手段として、ルールを作るというのも確かにあるかもしれませんが、パフォーマンスを上げることこそ大事ですし、パフォーマンスを最高にしたければ、最高の人材に最高の仕事をやってもらうことです。

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