合理的な人が選挙に行かないこれだけの理由 選挙にはもっと市場原理を働かせるべきだ

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いくら、パッケージのよいケーキでも、味がマズければ買わないという合理性を消費者は持っています。その合理判断が、どういうわけか、選挙の時に働かないのです。

つまり、今の日本の選挙という市場(マーケット)では、消費者たる有権者の賢明な合理性が触媒となっておらず、「競争」のメカニズムが機能していない、と言えます。そのため、昨今、とんでもなくおかしい政治家も現れています。

選挙に行かない人こそが良質な有権者

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それもそのはず、合理的な人々が選挙という市場に参加していないからです。自分の一票が「近似ゼロ効果」であることをよく認識している合理的な有権者がひとたび、選挙に行き、シビアな損得勘定で、冷厳に候補者を選定するならば、状況はガラリと変わるでしょう。そして、選挙という市場が本来持つ合理的な競争原理が健全に働きはじめるでしょう。

今、日本の政治に必要なのは、選挙に行かないという選択をする合理的な人々の合理性です。「面倒だから選挙に行かない」というのは究極の合理追求の姿であり、彼らは怠慢なのではなく、どこまでも合理的であろうとする人々なのです。彼らの合理性が選挙に生かされないことは大きな損失です。

問題は、彼らが自身の合理性に阻まれて、選挙に行かないことであり、また、それを覆すようなインセンティブがないことです。選挙という市場は合理的な人を求めているのに、合理的な人はその合理性ゆえに、選挙に行かないという皮肉なことになっているのです。

一方、政治家は競争原理や淘汰を嫌います。彼らは既存政党、既存基盤などの変化のない枠組みで、自己の立場を温存しようとします。そのため、合理的な有権者が選挙に行かない方が、政治家にとって好都合なのです。厳しい変化を嫌う政治家は、合理的なセンス(感覚)を持つ人間を最大の脅威と見なします。

選挙という市場のボラティリティ(流動性)が著しく低下し、競争原理が損なわれ、プレイヤー(市場参加者)がますます、市場から離れています。もっと魅力のある、あるいは真実味のある商品(政策の中身)をマーケット(選挙)に並べて、より多くの消費者を呼び込むことが必要です。

それによって、選挙に行かないという選択をする人々の「近似ゼロ効果」という意識が少しでも減じられることが望まれます。

今回の参議院議員選挙では、全政党が消費税の増税見送りの方針を掲げています。財政の健全化を願う有権者はいったい、どの政党に投票すればよいのでしょうか。商品選択の余地さえないようなマーケットが、魅力あるマーケットであるはずがありません。

宇山 卓栄 著作家

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うやま・たくえい / Takuei Uyama

1975年、大阪生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。代々木ゼミナール世界史科講師を務め、著作家に。各メディアで、時事問題を歴史の視点でわかりやすく解説。著書に『朝鮮属国史 中国が支配した2000年』、『韓国暴政史 「文在寅」現象を生む民族と社会』、『経済で読み解く世界史』(以上、扶桑社)、『民族で読み解く世界史』、『王室で読み解く世界史』(以上、日本実業出版社)、『世界史で読み解く天皇ブランド』(悟空出版)、『民族と文明で読み解く大アジア史』(講談社)など、その他著書多数。

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