「JR中央線」住みたい沿線で断トツ人気の理由 7路線を比較して浮かび上がった強みとは?

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中央線の弱点をあえて挙げるとすれば、駅数が少ない分、自宅から駅までの距離が遠くなりがちなことだ。しかし、バス便が整備されており、「他の路線に比べると、駅からの距離に関するユーザーの許容範囲は広い」と杉原氏は言う。

むしろ駅の少なさは、駅の希少価値の高さにつながる。たとえば中央線と西武新宿線の中間に建つマンション物件は、「西武新宿線の駅から徒歩●分」よりも「中央線の駅からバス●分」という売り文句のほうが訴求力は高いという。駅から遠い物件でも人気があるということは、駅近物件の希少性はなおさら高いというわけだ。

ではなぜ、中央線の駅数は少なく、他の路線は駅数が多いのだろうか。その理由について、「国鉄時代に事業の多角化が制限される一方で輸送力増強に力を入れてきたJRと違って、私鉄は沿線開発でも利益を出す必要がある。だから駅をたくさん作って不動産開発をしてきた」と、杉原氏は推論している。

駅前の商業集積度もトップクラス

中央線の強さを示す第3の理由として、杉原氏は「駅前の商業集積度」を挙げる。各路線の主要6駅を抜き出して、大型商業施設、コンビニ、スーパー、病院の件数を調べたところ、どの項目も1位もしくは2位という結果だった。

主要6駅の平均乗降客数に関しても、中央線は24万人でトップ。2位の小田急は16万人で、中央線の乗降客数は他の路線を大きく引き離す。これは駅の少なさの裏返しでもあるが、駅の乗降客数が多いため、大型商業施設が出店可能となり、駅前商業集積の充実につながっているわけだ。

人口や世帯数、居住形態などで検証すると、中央線は20代の若い世代と60代のシニア世代の人口が7路線中トップとなっている。「資産を多く保有する団塊世代や富裕層が多数住み、沿線の駅前再開発タワーはこうした層が積極的に購入している」(杉原氏)。これが現在の動きだとすれば、20代で中央線沿線に慣れ親しんだ層は、持ち家を将来購入する際の見込み客となる。中央線は今強いだけではなく、さらに伸びるポテンシャルも備えているといえそうだ。

大坂 直樹 東洋経済 記者

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おおさか なおき / Naoki Osaka

1963年函館生まれ埼玉育ち。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。生命保険会社の国際部やブリュッセル駐在の後、2000年東洋経済新報社入社。週刊東洋経済副編集長、会社四季報副編集長を経て東洋経済オンライン「鉄道最前線」を立ち上げる。製造業から小売業まで幅広い取材経験を基に現在は鉄道業界の記事を積極的に執筆。JR全線完乗。日本証券アナリスト協会検定会員。国際公認投資アナリスト。東京五輪・パラにボランティア参加。プレスチームの一員として国内外の報道対応に奔走したのは貴重な経験。

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