世界の賢人がロシア式「システマ」を学ぶワケ 「ルールを捨てる」ための世界一具体的な方策

拡大
縮小

――「武術」というと敵を打ち倒すテクニックというイメージがありますが、システマは単に敵を倒す方法ではなく、もっと幅広い知識や技術を伝えるものだということでしょうか。

そもそも武術の目的は「敵を倒す」ことではなく、「生き残る」ことです。戦場であれば一人の犠牲者も出すことなく、作戦を成功させることを目指して作られたのがシステマです。

システマというのは、英語では「system」すなわち「仕組み」です。仕事をする、家族を守る、社会に貢献する……人が生きるために必要なすべての「仕組み=system」を学ぶのがシステマですから、「格闘術」はそのほんの一部にすぎない、ということです。

先日、沖縄で米軍関係者に女性が襲われた件で、ある国会議員が「武道をやらせておけばよかった」という趣旨の発言をして、炎上していましたよね。もちろん、「つかまれた腕を振り払う」というような技術を習うことは悪いことではありませんが、暗い夜道で屈強な男性に襲われてしまったら、生半可な護身術では役に立ちません。

システマにおける「護身」は、「暴力への対処」に限ったものではありません。私たちは生きている限り、大小さまざまなリスクに囲まれています。車にはねられるかもしれないし、泥棒におカネを盗まれてしまうかもしれないし、体調を崩して寝込んでしまうかもしれない。あるいは、ネットゲームばかりやっていて仕事をサボり続けていたら、会社をクビになってしまい、食い詰めてしまうかもしれません。

こうしたさまざまなリスクをマネジメントすることが、本来の「護身」です。ですから、たとえば「毎日規則正しい生活をして、適度な運動をして、十分な睡眠を取る」ということや「しっかり働いて、約束を守って、仕事仲間の信頼を得る」といったことが、システマでは単なる「格闘術」よりも重視されるのです。

重要なのは「ルールを捨てる」こと

――いまのお話を聞いただけでも、「武術」という言葉でイメージされるものとは随分印象が違うことがわかります。

カナダのトロントにあるシステマ本部のウェブサイトに、次のようなキャッチコピーがあります。

NO BELTS OR UNIFORMS
NO KATAS OR STANCES
NO FORMALITIES OR RITUALS
REAL, PRACTICAL, AND EXCITING Training!
 
ベルトやユニフォームはありません。
型や構えもありません。
格式張った作法や慣習もありません。
リアルで実践的で、
とても楽しいトレーニングができます。
(システマ・トロントのウェブサイトより)
次ページビジネスパーソンがシステマを学ぶ意味
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT