時代錯誤な「下請けいじめ」、なぜ減らない? 指導数が過去最多に達した、3つの側面

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「親事業者が下請法を遵守するためには、下請法の詳細な運用まで熟知しておく必要があります。しかし、大企業による発注は極めて多数に上り、発注担当者も多数に上ります。発注の現場にまで詳細な法運用の内容を浸透させることは容易ではありません。そのため、なかなか下請法違反の件数が減らないのだろうと考えています」

他にも原因は考えられるのか。

「2008年頃からの推移をみると、下請代金の支払遅延と買いたたきが特に増加している傾向がみられます。これは、円安により輸入原材料の価格が上昇したことなどのしわ寄せが、下請事業者に向かってしまっていることが一因ではないかと思われます。

また、公正取引委員会等は、毎年、定期的な書面調査を実施しているのですが、その内容には年々工夫がこらされており、より多くの違反を発見できるようになったこともあると考えられます」

下請けいじめに遭った場合はどうすればいいのか

下請けいじめを受けたら、どう対応すればいいのか。

「親事業者からの下請はいじめに遭った場合には、積極的に公取委等に申告することを検討されるとよいでしょう」

公取委に申告したことが、元請け事業者にばれたりしないのだろうか。

「公取委は、下請事業者の秘密を厳守すると明言しています。また、あえて申告することに抵抗感がある場合は、定期的な書面調査の機会を利用し、公取委等に事情を報告するのがよいでしょう」

大東弁護士はこのように述べていた。

 大東 泰雄(だいとう・やすお)弁護士
01年慶應義塾大学法学部卒業。02年弁護士登録。09年~12年公正取引委員会事務総局審査局勤務。12年一橋大学大学院国際企業戦略研究科修士課程修了。独占禁止法,下請法等に関する論考・講演多数。
事務所名:のぞみ総合法律事務所

 

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