渋谷駅の雑踏が「選挙演説のカオス」になった 若者目当て!参院選最初の日曜日に各党殺到

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北朝鮮による拉致問題も言及された。そもそも恭子氏が政治の世界に入ったのは、拉致問題がきっかけだ。

「もう50年も前から北朝鮮の工作員が日本に入っていた。何人もの若者が拉致され袋に詰められ北朝鮮に連れて行かれたのに、敗戦国という軛(くびき)から解き放たれなかった日本政府は何もできなかった。そもそもこの問題が解決しない根っこには、現行憲法がある。憲法は国の民族の発露ともいうべき意義を持つのに、今の憲法はGHQが教科書を見て作ったもので、国際条約などから切り貼りしたものにすぎない」

日本のこころを大切にする党は、改憲ならぬ自主憲法制定を説いている。

社民党は給付型奨学金の必要性を強調

それとは正反対の護憲を主張するのが、スクランブル交差点を挟んだ反対側で街宣する社民党だ。しかし同党から東京選挙区で出馬の増山氏はこれには触れず、もっぱら給付型奨学金の必要性を説いていた。そして「祝18歳選挙! 増山れなと若者が渋谷で語る」を展開。現役の女子大生で自分も奨学金受給者であるという制服向上委員会のメンバーと熱く語っていた。

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朝日健太郎候補はハチ公前にやって来たものの、社民党が終わるまで待っために、いったんその場を去った。写真の背の高い人物が朝日氏(著者撮影)

その増山氏に少し遅れてハチ公前で街宣するはずだった朝日氏は、スタッフとともに銀座から地下鉄で渋谷まで来たものの、場所を社民党に占領されたまま渋谷西武前に街宣車を停めていた。そしてしばらく待っている様子だったが、さすがに午後5時48分頃に次の街宣会場に車で移動している。ちなみに事前予想では朝日氏は当選圏ぎりぎりだが、増山氏は及ばず。だがハチ公前争奪戦では、増山氏の“勝利”だったようだ。

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首にギブスを付けて練り歩く青山繁晴氏

さて、公示直前に安倍晋三首相の要請を受けて自民党から比例で出馬した青山繁晴氏は、予定の時間を少し遅れて109前に姿を現した。選挙戦初日に交通事故に遭い、ムチ打ち状態になっていたが、この日のお昼に痛みに耐えかねて、急きょ病院に駆け込み、ギブスを付けている。

にもかかわらずこの日最後に新宿アルタ前で行われた街宣では、数百人の聴衆が青山氏の演説を1時間以上も聞き入った。拉致問題は青山氏の原点ともいえるが、メタンハイドレートや中国船による赤珊瑚強奪問題、イギリスのEU離脱が世界にどんな影響を与えるのかについても触れている。

「イギリスで起こったことは他人事ではない。イギリスは米国と組んで戦争で勝ってきた国。それなのに勝者が崩れ始めた。米国に頼ってきた日本は、これからは自分で自分を守らなければならなくなるだろう。世界がその環境を用意してくれているのだ」

各政党とも、それぞれ自党の最も強調したい点を主張しているとはいえ、そのテーマは拡散している。争点がはっきりとしない選挙戦は、有権者の心をとらえることができるだろうか。関心を集めることがないまま投票率が落ち込めば、そのことが結果に大きな影響を与えることになるかもしれない。

安積 明子 ジャーナリスト

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あづみ あきこ / Akiko Azumi

兵庫県生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。1994年国会議員政策担当秘書資格試験合格。参院議員の政策担当秘書として勤務の後、各媒体でコラムを執筆し、テレビ・ラジオで政治についても解説。取材の対象は自公から共産党まで幅広く、フリーランスにも開放されている金曜日午後の官房長官会見には必ず参加する。2016年に『野党共闘(泣)。』、2017年12月には『"小池"にはまって、さあ大変!「希望の党」の凋落と突然の代表辞任』(以上ワニブックスPLUS新書)を上梓。

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