JAL、ANAに暗雲? B787は大丈夫か 出火事故に続きまたトラブル

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このB787は米ボーイング社が今最も力を入れている戦略機材だ。中型機でありながら、燃費効率が同等の大きさの「B767」よりも約20%高い。従来は燃料タンクの大きい大型機でなければ飛べなかった、2万キロメートル程度までの長距離フライトが可能で、1便300~400人規模の大きな需要が見込めない中規模都市への就航が実現できる。JALが昨年より成田―ボストン線、成田―米サンディエゴ線などの新路線を開拓できているのも、このB787の力によるものだ。

B787はJAL、ANAの根幹を支える存在

世界中が注目するこの新型旅客機。日本の全日本空輸(ANA)が11年に世界で初めて納入を受けるローンチカスタマーとなり、JALもそれに続いている。それだけ、両社がこの機材に寄せる期待は強く、今後の中期的なネットワーク戦略の根幹を支える存在と位置づけている。

だが、当初08年に予定されていたANA向けの初号機引き渡しは計7回も延期され、3年以上遅れる結果となった。納入開始後もトラブルが連続。昨年7月には、納入前の試験機が飛行中に、エンジンから破片を落とす事故を起こし、米国家運輸安全委員会が調査に乗り出す事態となっている。また、昨年12月には、ANAの岡山―羽田便でも、飛行中、操縦席の窓ガラスにひびが入るトラブルが起きている。

同旅客機の不安が解消されなければ、JALやANAが航空会社として担保しなければならない安全運航に暗雲がたれこめるのはもちろんのこと、両社の経営戦略自体も揺らぎかねない。ボーイングには一刻も早い原因究明と、対応策の実施が求められる。

(撮影:尾形 文繁)

桑原 幸作 東洋経済 記者
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