"ハムだけ"じゃない日本ハムの北海道戦略 「北乳」へ出資し、ヨーグルトの拡充を狙う

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TPP(環太平洋パートナーシップ)協定が発効されれば、安価な輸入のバターや脱脂粉乳が国内で流通し、国産乳製品の価格が下がる可能性がある。乳業メーカー各社は売り上げを維持するため、ヨーグルトなどの高付加価値化を進めており、北海道乳業もそのための資金を必要としていたのだ。

「バニラヨーグルト」などを生産する、日本ハムの子会社・日本ルナの本社と京都工場

一方、日本ハムは子会社の日本ルナを通じて、京都と群馬でヨーグルトを製造しているが、日本の生乳の半分を生産する北海道には拠点がなかった。

今回の出資後、「バニラヨーグルト」など主力品の製造を北海道乳業に委託する。これにより、三つ目の製造拠点を手中に収め、増産体制を整える公算だ。

森永や雪印の牙城を崩すには

市場調査会社のインテージによると、2015年の日本国内の家庭用ヨーグルト市場は約3883億円。この4年間で36%増と大きく成長している。市場の拡大を追い風に、日本ハムもヨーグルトの売り上げを伸ばしたいところだ。

しかし、市場シェアの半数近くを握る明治ホールディングスを始め、森永乳業や雪印メグミルクなどの上位メーカーも、増産や新製品開発を積極的に進めており、その牙城を崩すことは容易ではない。

そこで日本ハムは、北海道乳業との合弁会社の設立も計画する。詳細は決まっていないが、北海道乳業の新鮮な生乳を原料とした新たなヨーグルトを共同開発し、日本ハムの全国の販路に乗せて販売できれば、上位メーカーに食い込めるかもしれない。

日本ハムが消費者や株主から、"ハムだけじゃない"と認められる日は、北海道乳業とのシナジーを発現した先にある。

中山 一貴 東洋経済 記者

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なかやま かずき / Kazuki Nakayama

趣味はTwitter(@overk0823)。1991年生まれ。東京外国語大学中国語専攻卒。在学中に北京師範大学文学部へ留学。2015年、東洋経済新報社に入社。食品・小売り業界の担当記者や『会社四季報 業界地図』編集長、『週刊東洋経済』編集部、『会社四季報』編集部、「会社四季報オンライン」編集部、『米国会社四季報』編集長などを経て2023年10月から東洋経済編集部(マーケティング担当、編集者)。「財新・東洋経済スタジオ」スタッフを兼任。

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