ポール・スチュアート、三井物産になぜ身売り 米国「財政の崖」問題が背景か

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ここから先は創業家に聞かないとわからないが、米国の「財政の崖」問題と無縁ではなかっただろうという推測が立てられる。オバマ大統領が富裕層のキャピタルゲインや配当に対する税率引き上げを表明してから、米国では会社の売買、大増配が増えた。買収価格が非開示であること(創業家の収入が明らかになってしまう)、売買が12月28日と期限ぎりぎりであることなどから、ポール・スチュアートもその一環と考えられる。

「誰でもよかった」ワケではない

ただ、創業家としても70年以上育てたブランドの買い手が誰でもいいというわけにはいかない。40年弱の付き合いがあり、日本市場での認知度を高めてくれた三井物産に、というのは自然な流れだ。

地盤である日本では、現在のサブライセンシー14社とのパートナーシップを強めることで15年までに小売売上高を約1.7倍の200億円にする計画だ。一般に海外ブランドはいつ契約を打ち切るかわからないため、ライセンス供与を受ける立場としては思い切った広告宣伝費の投入や設備投資に及び腰になる。

自らが経営権を握ったことでサブライセンシー各社に安心感が生まれ、販売が伸びると三井物産は考えている。ただ、三井物産がポール・スチュアートを日米だけでない世界ブランドにできるかどうかは未知数。また、買収価格に加え米国の売上高が非開示であるため、この買収の良否については現段階では言及できない。

(タイトル下の写真は米国ニューヨークにあるポール・スチュアートの店舗)

筒井 幹雄 東洋経済 記者

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つつい みきお / Mikio Tsutsui

『会社四季報』編集長などを経て、現職は編集委員。

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