英国のEU離脱は、極めて合理的な判断だった 英トップエコノミストが予言していた「崩壊」

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単一市場のメンバーにならずとも、単一市場に輸出を行うことは完全に可能だ。結局のところ、米国、中国、日本、インドなど単一市場に加わっていないたくさんの国々が、EUに首尾よく輸出を行っている。彼らはこぞってEUとFTAを結ぼうとしているが、単一市場に加わることは考えていない。だとしたら、英国が単一市場の一員であることがなぜそれほど重要なのだろうか。

NAFTA加盟という選択肢

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ここまでに明らかにしてきたとおり、英国はEUから離脱しても、おそらくEUとの間に条件のよい緊密な貿易関係を確立できるだろう。しかし私はそうならないリスクについても認めてきた。このリスクが多くの人々に、英国が世界の中で「独りぼっち」になるのではないかという恐れを抱かせている。上記の議論では、そうした恐れを鎮めるような諸点を示した。

さらに、英国は世界の多くの国々とFTAを結べるだろう。それだけではない。英国がそれを望むならだが、「クラブに加わる」ことの利点を提供してくれそうな組織が2つ存在する。

ひとつ目は北大西洋自由貿易地域(NAFTA)だ。美術史家のケネス・クラークはあえてその考えを批判し、こう述べた。

英国人の魂には常に何かロマンチックなものがあった。英国はどんな困難にも屈しないという「軽騎兵旅団の突撃」のような話に、私たちは感動せずにはいられないのだ。EUを抜けてNAFTAに入るという発想の背後にも、同じような心情がある。

 

実のところ、英国のNAFTA加盟は決して非現実的な話ではない。米国テキサス州選出のフィル・グラム上院議員も、それを提案したことがある。間違いなくその案は、英国のみならず、米国とカナダでも少なからぬ支持を得るだろう。

EUの一員である限り、英国がNAFTAに加盟することはできない。しかしEUから離脱するなら、話は別だ。これは英国にとって好ましいシナリオになる。なぜならNAFTAに加盟すれば、経済に何らの規制を負わされることなく、北米と自由貿易を行えるからだ。しかもEUを含む世界中の国々やブロックを相手に、FTA交渉を行うこともできる。

もうひとつ、興味をそそる展望がある。英国は、「英連邦」と呼ばれる素晴らしい国家グループの中心にいる。英国民の意識の中ではこのグループの存在感は薄れつつあるが、GDPの総計は相対的に急速な成長を遂げている。

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