中国人高校生、「LCCを経営したい!」のワケ 成田空港でのインターンで考えたこと

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内装も他のターミナルと比べると簡易だが、その分、ターミナルの使用コストもおさえられる(撮影:尾形文繁)

内装も他のターミナルと比べると簡易。結果として航空会社は第3ターミナルの使用コストを第1・第2ターミナルの半分ぐらいに抑えられるようになった。2016年6月時点で日本のLCC3社、海外のLCC3社、合わせて6社が使用している。また成田第1・第2ターミナルでは日本のLCC1社、海外のLCC9社がある。

三つのターミナルを合わせてLCCは16社。今年の成田からの出発便のうち、およそ4分の1がLCCだ。2011年この数字は3%も超えていなかったため、その急伸ぶりがわかるだろう。

日本最大の航空会社の全日空(ANA)もLCC業界に参入している。ANAは直接ここ5年間に日本国内外のLCCのピーチ・アビエーション(38.67%持株)、バニラエア(100%持株)とエアアジア・ジャパン(51%持株)に出資。また、去年1月にスカイマークが破産宣言した後に、ANAが親会社になった。JALも成田で一番強いと言われるLCCのジェットスター・ジャパンに33.3%出資。外国のLCCは日本に積極的に進出したいところだが、日本では日本の航空会社の外国資本は3分の1を超えていけない制限がある。日本の協力航空会社や他の投資会社の支援が無ければ業務展開は不可能な構造といえる。

アジアの主要都市を結ぶLCCを作りたい!

最近は羽田空港でも海外へのLCC便が始まっている。成田は夜11時から朝6時まで飛行制限があるのに対し、羽田は24時間運航できる。夜の便をうまく利用するとホテル代を節約できるうえ、会社で仕事を終えた後に飛行機に乗る、ということもできるため、一部の観光客にとって深夜便は一番得だ。しかも、日中の羽田空港の発着枠は混みあっており、新しい航空会社がなかなか入れない。それに対し、深夜の羽田はまだ便数が少ない。そのため、多くのLCCが夜11時と朝5時の間で運航を始めている。

「LCCは一部の利用者の利益になるだけ」と考えられがちだが、そうではない。LCCによる好影響は伝統的なフルサービス航空会社しか乗らない人たちにも及ぶ。LCCが参入している路線では価格競争が起きるため、フルサービス航空会社の航空券もかなり安くなる。その意味では、LCCは飛行機を乗る全ての人に利益を与えるといえるだろう。

昨年働いた春秋航空日本は日本のLCC会社だ。上海に本部がある春秋航空からの投資は33.3%で、残りはJTBなど日本の会社が出資している。春秋航空の母体はもともと旅行業を営んでおり、飛行機をチャーターして自社で集めた旅行客を目的地に運んでいた。その後、航空会社を設立して現在に至っている。旅行業と航空業の相乗効果は絶大だったといえる。中国人の日本旅行ブームは春秋航空日本にとって強烈な追い風だ。

とはいえ、日本の航空業界は保守的で、JALの破産宣言まではJALとANA二つの航空会社は日本国内線の90%もマーケットシェアを持っていた。今でも2社のシェアは70%以上ある。

日本の国内線は他国と比べるとかなり高い。新幹線の運賃も極めて高い。そのため、日本国内における都市間の移動コストはどうしても高くなりがちだ。LCCの参入が増えることで、多くの利用者がメリットを受ける。LCCの成長は、まだまだ続くに違いない。

ジョン・ウー フィリップス・アカデミー 11年生

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John Wu

上海のアメリカンスクールで小学校を卒業後、11歳でアメリカに行き、Fessenden schoolに入学し、2013年9月にPhillips Academy(ボストンの近くにある私立高校、ブッシュ大統領親子の出身校)に入学し、現在11年生

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